
陳茂波(Paul Chan)財政長官は2月26日、2025-26年度の財政予算案を発表した。「北上消費」や不動産不況などの影響を受け、好調とは言えない経済環境の中、いかに景気を浮上させるかが鍵となる。AIを重要な産業として位置付け、AIを活用したビジネス環境の整備を図る。
2024年の経済成長率は、世界情勢の不確実性、北上消費などのマイナス要素があったが、政府の景気浮揚策や昨年9月にアメリカが0.5%の利下げをしたことで、ペッグ制を採用する香港も利下げをすることにつながった。その結果、資金調達などがしやすくなり、2.5%の成長となった。
2025年は、依然として不安定は世界情勢、保護主義の台頭がある一方、観光客が戻りつつあり、世界の金融情勢は緩和傾向を強めると考えられるため、不動産などの固定資産投資がしやすくなることで2~3%の経済成長を予想している。
不動産不況により、土地売却収入が細り、2025年度は4年連続の財政赤字になる見込み。2025-26年度の一般歳入は6,594億香港ドル、支出は8,223香港ドルを予定する。これに政府債券など財政予算案の歳入に組み込んでいないその他の収入を計算すると、最終的に670億香港ドルの赤字予算の見通しとなる。前年度が872億香港ドルの赤字だったことから赤字幅を圧縮し、2026-27年度からは黒字に転換させたい考えだ。
財政備蓄は3月31日の時点で6,473億香港ドルになる見込みとし、来年3月31日までに5,803億香港ドルにまで減少する。過去最高だった2018-19年度は1兆1,700億香港ドルの財政備蓄だったため、備蓄がほぼ半減することになる。
そのため、2027-28年度までに支出を7%減らすことを決めた。その一環として、行政長官や立法会(議会)議員、裁判官などを含む全公務員の昇給を停止する。公務員は2027年4月までに1万人分を減らすほか、2027-28年度まで毎年全体の2%ずつを削減する。
歳出を分野別に見ると、衛生が1,410億香港ドル(シェア16.1%)、社会福利が1,391億香港ドル(同15.8%)、インフラ整備が1,193億香港ドル(同13.6%)で、トップ3の項目が入れ替わった。
教育は1,124億香港ドル、各種サポートに873億香港ドル、保安に690億香港ドル、経済が610億香港ドル、環境・食物が535億香港ドル、社区と対外事務が298億香港ドル、住宅97億香港ドルなどとなった。
香港政府は、より強い経済態勢を構築するためAIに力を入れる。物流のハブであり、中国へのゲートウェーなどの年機能を生かし、AIにおける国際交流や出会いの場を提供することも視野に入れる。10億香港ドルを投じて「香港人工知能研発院(Hong Kong AI Research and Development Institute)」を設立し、人材育成や研究開発を行う。
物流には2億1,000億香港ドルを投じるほか、「香港海運港口発展局(Hong Kong Maritime and Port Development Board)」を設立し、港湾貿易を強化する。
中環(Central)、尖沙咀(Tsim Sha Tsui)、湾仔(Wan Chai)、北角(North Point)にある海浜プロムナードに飲食施設の充実を図るほか、紅●(Hung Homg)南部にヨットハーバー、商業施設と住宅開発を行う。
新エネルギーに転換するための基金に4億7,000万香港ドル分を投入し、EVのバス600台分の購入に活用する。3000台分をEVのタクシーに転換するため1億3,500万香港ドルの補助金を計上する。
観光業活性化のため香港政府観光局(HKTB)に12億3,500万香港ドルを計上する。啓徳体育園(Kai Tak Sports Park)を活用してスポーツやコンサートの誘致にも力を入れる。一方、税収を増やすため、航空機で香港を離れる人に対して離境税を現行の120香港ドルから200香港ドルに引き上げる。これにより16億香港ドルの増収を見込む。
映画では、これまでに「電影発展基金(Film Development Fund)」に13億香港ドル以上を投入し、その結果120本以上の映画製作に資金を提供した。これが110人以上の新監督、新プロデューサーの起用につながったことから、映画業界の支援を継続する考えだという。
所得税は、上限を1,500香港ドルとして予定納税額の100%を減免する(前年は3,000香港ドル)。法人では、事業所得税は、上限が個人所得税と同じ1,500香港ドルを上限に100%免除する。香港政府に支払う土地のレーツについては、住宅用、非住宅用ともに第1四半期は、1戸当たり上限を500香港ドルとして減免する。
土地は、空室率が高まっていることから、この1年間は政府が保有する土地について商業用としては競売を行わないことにした。公営住宅は、次の5年で19万戸を供給する予定で、民間住宅もこの先5年間で1年平均1万7000戸の住宅が完成することになっている。
近年、バスケットボールで違法賭博が行われており、昨年は700億から900億香港ドルが動いたといわれているが、それを逆手に取り、「バスケットボールくじ」として合法化することを計画する。サッカーくじを運営している香港ジョッキークラブと話し合っていくという。
●=石へんに勘。