
香港の交通系のICカード「八達通(Octopus)」は3月4日、同カードのアプリ機能を通じて最短で今年の第3四半期からオクトパスが日本でも利用できるようになることを明らかにした。
オクトパスは1997年に発行を始め、現在までに2000万枚以上を発行。98%の香港市民が保有しており、人口750万人で割った場合、1人2.6枚を持っている計算になる。
ソニーとフィリップスが共同開発した無線通信規格「Near Field Communication(NFC)」を利用し、地下鉄(MTR)の改札の通過や運賃の徴収を行うことができるほか、商業ビルやマンションに入るための入館カードにも使われている。ほかにもスーパーマーケットやコンビニエンスストア、ファストフード店など小売店を中心にあらゆる場所で使うことができる。
その後、タクシーで決済ができるようにしたり、チャージの上限を1,000香港ドルから3,000香港ドルに引き上げたり、深●の交通系ICカード「深●通」と一体化した「互通行」というカードを作ったりするなどしてきた。
さらに、iPhoneやアップルウオッチ内蔵オクトパス、ファーウェイペイ内蔵オクトパス、サムスンペイ内蔵スマートオクトパスとも提携するなどサービスの拡充には余念がない。
2025年下半期には送金機能が付加される予定で、オクトパスユーザー同士でお金を送金することが可能になる予定もある。
今回、オクトパスが日本で利用できるように調整するのは、訪日する香港人の多さが理由。日本政府観光局(JNTO)によると、2024年に日本を訪れた香港人は過去最高の268万3500人を記録するなど、香港人にとって日本は最も人気の高い渡航先となっている。日本でも利用できるようにすることで、競争相手である、各種電子決済サービスやタッチ決済サービスを始めたクレジットカード会社との競争に勝ちたいと考えているためと見られる。
現在、日本にあるいくつかの決済プラットフォーム企業と協議しており、詳細を詰めているところだという。仕組みとしては、オクトパスのアプリを立ち上げ、店側が提供するQRコードをスキャンして支払いを行う。自動的に香港ドルに変換され、オクトパスの口座から引き落とされる。利用するにはオクトパスのアプリをダウンロードする必要があり、オクトパスの「カード」は利用できない。
オクトパスは中国の「銀聯(UnionPay)」、タイの「プロンプトペイ」、韓国の「ゼロペイ」と協定を結び、香港から旅行者がオクトパスのアプリを海外で利用できるようにし、外国で展開するノウハウを蓄積してきた。日本でのサービス開始が香港市民の間で期待されている。
●=土へんに川。