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香港とイタリアのテキスタイル展を対話形式で同時開催

イタリアのテキスタイル産業の歴史と未来を展示する「FABRICa: Italian Textile Style and Innovation」

イタリアのテキスタイル産業の歴史と未来を展示する「FABRICa: Italian Textile Style and Innovation」

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 テキスタイルの過去・現在・未来を探る対話形式の2つの展覧会「FABRICa: Italian Textile Style and Innovation」と「Engineered Reverie: Hong Kong Textile Futures」が10月25日、深水●のクリエーティブ拠点「DX Design Hub」(The Gallery, 1/F, 280 Tung Chau Street, Sham Shui Po, Kowloon)で始まった。香港デザインセンター(HKDC)と在香港・マカオイタリア総領事館が主催し、イタリア外務・国際協力省が後援する。同施設は布文化と創意産業を融合させ、若手デザイナーの育成と地域との連携を目指している。

香港のテキスタイル産業の未来像を描くEngineered Reverie: Hong Kong Textile Futures」

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 深水●は1950~80年代にかけて香港の繊維・衣料産業の中心地として栄え、世界の衣料品輸出をけん引する存在だった。しかし1990年代以降、生産拠点は中国本土へと移り、香港の繊維産業は一時的に影を潜めた。だが近年、テキスタイルは「Techstyle(テックスタイル)」という新たな文脈で再浮上している。

 深水●は現在も布地や裁縫資材の卸売市場と重要なエリア。「ボタン通り」と呼ばれる基隆街(Ki Lung Street)、「ビーズストリート」として知られる汝州街(Yu Chau Street)、「レザーストリート」として革素材や職人向け資材が集まる大南街(Tai Nan Street)などがある。

 かつて世界有数の繊維・アパレル製造拠点として栄えた香港が再び「布」に焦点を当てる背景には、単なる製造業としてではなく、デザイン、テクノロジー、サステナビリティー、国際連携を軸に、「テキスタイルは新たな産業と文化の交差点」と再定義しようとしていることがある。

 同展は、東西の織物文化を軸に、イタリアの職人技と香港の未来志向のクラフトを並べ、国際都市・香港ならではの文化交流の可能性を提示することを目的に開く。

 イタリアのテキスタイル産業の歴史と革新を6つのモジュールで構成した「FABRICa」は、建築家コッラド・アンセルミ(Corrado Anselmi)さんが空間を設計し、キュレーターはジュリア・フォルトゥナート(Giulia Fortunato)さんが務める。

 展示は、フィレンツェの毛織物貿易、ロンバルディアの桑畑と絹産業、ベネチアのサテンやベルベットといった歴史的背景に始まり、現代の高機能素材やサステナブルな技術へと展開。来場者は、貴重な布地の触感や没入型映像や、リサイクル素材で作られた座席エリアなどを通じて、イタリアの「素材を超えた文化的遺産」としての織物に触れることができる。

 対する展示となる香港のテキスタイル産業の未来像を描く「Engineered Reverie」は、香港のテキスタイル産業の未来像を描くもの。エレイン・ン(Elaine Yan Ling Ng)さんがキュレーターを務めるが、彼女の代表作「Reverie」コレクションを中心に、伝統技術とテクノロジーの融合を提示する。

 展示では、香港の家具ブランドNUOVOがReverieの布地でビンテージイタリア家具を再構築し、持続可能なラグジュアリーアイテムを提案する。ファッション・インテリアデザイナーのカテリン・テイスさんは、布地を彫刻的なウエアラブルアート「Reverie Skin」へと昇華させ、素材の可能性を追求した。

 地元・香港で家具や内装に使われる布地・革などの素材を張り替えたり、縫製・加工したりする職人の技術を生かし、複雑な曲線や縫製にファッション的アプローチも紹介。香港が持つ「地理的・文化的優位性」を生かし、国際的なブランドとの協業による新たなテキスタイルモデルを提案する。

 香港デザインセンターのエグゼクティブディレクター、レイニー・チャンさんは「当展はイタリアのデザインを香港で体験できる貴重な機会であり、地元クリエーターが国際的な視点を得る場でもある」と話す。イタリアのカルメロ・フィカッラ総領事も「イタリアの織物文化を紹介するだけでなく、香港の活気あるデザインシーンを深く知る機会」と述べ、双方向の文化交流の意義を強調した。

 開館時間は11時~19時。火曜休館(祝日除く)。入館無料。11月26日まで。

 ●=土へんに歩。

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