何世代にもわたって香港人に愛され、香港島の灣仔で80年以上展開してきた「茶餐廳(チャーチャンテン)」と呼ばれる大衆食堂の「檀島●●餅店(ホノルル)」が3月1日で閉店する。名物のエッグタルトとミルクティーが人気の老舗が、旧正月前の2月12日、突然の閉店告知を掲出した。この知らせに、多くの灣仔住民が悲しんでいる。
同店は1940年代に楊展煕さんが開業し、以来香港の人々に親しまれ、香港における「茶餐廳」の元祖ともいわれる。楊さんは香港生まれで、中学校卒業後、飲食業界に身を投じ、その後数人の友人と共同出資で数軒の「檀島冰室」を開業した。創立時は「ハワイ産コーヒー豆に匹敵する風味を出し、口当たりはまろやかで、香りは芳醇(ほうじゅん)で濃厚のコーヒーをいれたい」という思いから店名を「ホノルル」と名付けたといわれている。
最初の店舗は深水●の青山道にあり、独自レシピのコーヒーが特徴的だった。1977年に灣仔の駱克道(ロックハートロード)に移転し、1990年に軒尼詩道(ヘネシーロード)の現在の場所に再移転。初期の「檀島冰室」は飲料以外はパンやクッキーのみを提供し、現在では定番のマカロニやパスタは扱わず、営業時間は18時までだった。店名は70年代に「檀島冰室」から「檀島●●餅店」に変更された。
かつての店は香港島と九龍の多くの地区に広がり、深水●、土瓜湾、●箕湾、灣仔、北角などに複数店舗を構えていた。各店は同名でも、株主は必ずしも同じではなく、フランチャイズに似た事業形態だった。幾度かの浮き沈みを経たが、灣仔店が閉店すると、営業を続けるのは將軍澳のみになる。
1980年代から1990年代にかけて、香港経済は好調で飲食業界も活況を呈したが、競争は激化。「ホノルル」は顧客誘致のためメニューを拡充し、麺類、炒飯(チャーハン)、ローストミート(燒味/シウメイ)などを提供し始めた。香港特有のメニューがどんどん増えていくスタイルである。
さらに90年代に支店開設に着手し、中環と將軍澳に進出し、多くがパン店併設のカフェとなった。中環店は2017年で賃貸契約満了により閉店したが、現在、中国本土、シンガポール、台湾、マレーシアに進出し、世界各地に支店を展開している。
最も有名なエッグタルト「金牌192層酥皮蛋撻」と、「滑らかさ」が売りの香港式ミルクティーは、数えきれないほどの灣仔地区のサラリーマンや学生たちの記憶となっている。エッグタルトは中国湖北産の卵を使い、外側のパイが192層になっているため、「サクサクの食感」が人気の理由。ミルクティーは、数種類の粗いものと細かい紅茶の葉を加えて配合している。ミルクティーとコーヒーを飲むロゴ入りマグカップもシグネチャーとなった。
種類が豊富で香港の定番メニューがそろう同店では、併設のパン店で、菠蘿包(パイナップルパン)とクッキーも販売している。灣仔店は人気俳優・張學友さんと湯唯さんが主演した映画「月満軒尼詩」のロケ地となり、映画のメインの撮影場所となっていたことも人々の記憶に残る。
閉店の知らせを聞いた多くの地元住民は「時代の流れを感じた」「また一つ、ランドマークが消える」と惜しむ声が相次いでいる。ネットでは「昔はよく行った。懐かし。ミルクティーが絶妙で、ちょうど良い味わいだった。エッグタルトはさらに一流だった」「昔モンコクにも店舗があった。当時の鴛鴦茶(紅茶とコーヒーを混ぜ合わせたもの)とエビトーストがおいしかった」など惜しむ声が大きい。
店に貼り出された紙には「物語は続く」と強調している。將軍澳坑口店は営業を継続し、市民は引き続き同店で看板メニューのパイ生地エッグタルトやミルクティー、香港料理を楽しめる。さらに、「新たな拠点で再会し、ホノルルのクラシックな味を共に楽しみ続けられることを期待している」と予告し、従業員募集の案内も掲出されたままであることから、将来的にはに新店舗の展開を見込む声もある。
●=土へんに歩、●=口へんに加、口へんに非。●=竹かんむりに肖