「アートウイーク」と呼ばれるほど街全体が芸術に染まる春の香港で3月25日、中環のハーバーフロントを会場に「アートセントラル(Art Central)」が開幕した。昨年は6日間で4万3000人以上が来場。今年は規模を拡大して、ギャラリー数やプログラム数を増やし、特にデジタル文化やアジアの新進作家に焦点を当てる。
香港出身アーティスト Kaitlyn Hau による実と仮想の境界を揺さぶる没入型インスタレーション
世界的な現代美術フェア「アートバーゼル香港」が国際的なコレクターやギャラリーを集める一方、若手や実験的な作品に焦点を当てる「Central Yards Edible Art Fair」なども開催し、香港は多層的なアートシーンを発信している。その中で革新性や親しみやすさを打ち出す「アートセントラル(Art Central)」は5日間にわたって開催。117ギャラリー、500人以上のアーティストの参加が実現した。
同催事のリードパートナーである大華銀行(UOB)は、UOBアートスペースで特別プログラムを展開する。入り口付近に設置した初公開の大型インスタレーション「White Mirror-The Vista of Inner Worlds」は、細胞イメージの長期研究とケンブリッジ大学での科学的調査を融合させた没入型の彫刻庭園で、芸術・科学・哲学を橋渡しする意味を持たせたという作品。紙の彫刻と映像を組み合わせたインスタレーションは、「宇宙の風景と禅庭園」を想起させる。この空間には神経細胞をモチーフにした抽象的な彫刻を配置し、細胞の動きを映し出す映像と組み合わせる。微視的な世界を拡大し歩ける環境へと変換することで、身体・心・外界の相互関係を考えさせる作品に仕上げたという。
日本から参加した「ギャラリー椿(Gallery Tsubaki)」は東京・京橋に拠点を置く現代美術ギャラリーで、木材を素材に丸太から削り出された人物像を切り出す彫刻作品を展開する中村萌さんと、淡いパステル調の抽象絵画を描く堀込幸枝さんの作品を紹介。初めて香港で紹介された堀込さんの油絵作品は、通常なら絵の具を重ねて厚みや筆致を際立たせる技法を用いるところを、あえて薄く塗り重ねることで「空気」を描き出す。淡いパステル調の色彩によって、物理的な凹凸ではなく、絵画全体の雰囲気や詩的な世界観を形づくることに重点を置き、油絵の持つ質感を、厚みではなく空気感や表情の演出へと転換することで、独自の静けさと余韻を生み出す。
神戸の「歩歩琳堂画廊」は、細密なペン画で昆虫や人間の顔など多様なイメージを組み合わせた藤森大樹さんの作品を紹介。虫眼鏡で見るとさらに驚かされるボールペンによる精緻なドローイングは、香港人だけでなく欧米人からも注目も集めていた。「香港での展示は初めて」という藤森さんは、今回の催事のために香港の狭い住環境を考え18センチ四方で、3色を基本に描いた作品も準備したという。
UOBは香港の登録慈善団体「UOB Art Academy」と協力し、水墨ワークショップも開催。参加費は1回260香港ドル(17歳以下と60歳以上は半額)で、収益は香港の恵まれない子どもたちへの美術教育に充てられる。
28日15時からは、パネルディスカッション「読めないものを読む:言葉がイメージになるとき」を開催。言語が現代美術において抽象化・解体・異分野融合を経て視覚的・概念的表現へと進化する過程を議論する。
開催時間は、25日=12時~17時、26日・27日=12時~19時、28日=11時~19時、最終日(29日)=11時~17時。一般入場券(大人180香港ドル)は既に完売しており、現在は通常価格のチケットのみ販売中。25日~28日=大人230香港ドル、最終日(29日)=260香港ドル。今月29日まで。