多彩な才能を持ち、アメリカのデザインを定義づけたともいわれる20世紀のアメリカを代表するデザイナー、ジョージ・ネルソン(1908-1986)の展覧会が現在、西貢地区・調景嶺(ティウゲンレイ)のHKDI Gallery(3 King Ling Road, Tseung Kwan O, New Territories, Hong Kong)で開催されている。タイトルは「George Nelson-Achitect, Writer, Designer, Teacher(建築家、ライター、デザイナー、教育者)」。香港知専設計学院、香港専業教育学院、ドイツのヴィトラ・デザイン・ミュージアムの共催。
入り口正面には冷戦下のモスクワ「アメリカ博覧会」で展示された「ジャングルジム」の模型
新界の東端の調景嶺は高層住宅が立ち並ぶ再開発エリアの一つ。駅のショッピングモールから連絡通路でつながる会場ともなる「香港デザインインスティテュート(香港知専設計学院)」を中心にクリエーティブ産業の発信地として建設された建物がそびえ、同展はグランドフロアのギャラリー内で開催されている。
ジョージ・ネルソンは米コネチカット州ハートフォードで生まれ、イェール大学建築学科卒業後、ローマのアメリカン・アカデミーで学び、ニュー ヨークで建築事務所を設立。建築雑誌の編集長を務めるなど、デザインの本質を語る著書も多いことで知られる。ハーマンミラー社をデザイナー・ディレクターとしてけん引し、家具、照明など数々の作品を残した。
同展のタイトル通り、デザイナーでありながらも、建築家、編集者、教育者などさまざまな顔をもち、その様子を年代ごとの作品や映像などで紹介している。会場では、椅子、家具、時計、照明などの作品と人物を振り返る写真や映像、合わせて数百点を飾る。
入り口付近に展示する壁掛け時計は35年にもわたりハーマンミラー社で続いたプロジェクトにより生まれたもので、現在も愛好家が多いシリーズ。ジョージ・ネルソンが残した130を超えるデザインの中から16点を展示している。いずれも個性的な作品が多く、「人は時計の針の位置を見るだけで時間が分かる」という本質をもつことから、どれも時間を示す数字はデザインされていない。
香港人には代表作の一つ「マシュマロ・ソファ」が人気で、ソファを前に談笑する様子が見られる。「L字型のワークデスクからはタイプライターを置く場所や物を書くスペースなどが必要だった様子が垣間見られ時代の違いを感じるものの、色使いやフォルムなどは50年以上たった今でも新鮮に感じるものが多い」と会場を訪れていた香港人学生。
開館時間は10時~20時。火曜定休。入場無料。6月2日まで。7月15日から日本(目黒区美術館)でも開催予定。