ビザ規制と関税緩和に揺れる運び屋ビジネス 香港「爆買い」の首都・上水の今

お金と商品引き渡しの現場。足元に粉ミルクが見える

お金と商品引き渡しの現場。足元に粉ミルクが見える

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 中国政府が4月13日から広東省深セン市の戸籍を持つ市民の香港訪問を週1回に制限する「1周1行」を実施することを決めた後、6月1日から中国で日用品の関税を引き下げられることも背景に、運び屋ビジネスにも影響が出始めている。

赤い大きな字がもうけ分。徳興水站の文字が見える

 運び屋につながる「爆買い」が始まった理由は、2007年に人民元と香港ドルの通貨逆転にある。翌2008年に中国でのメラニン混入粉ミルク事件が発生。当時一人っ子政策を進めていた中国では、外国ブランドの粉ミルクを香港で購入していたが、それが徐々にトイレットペーパーなどの日用品に広がっていった。

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 香港における「爆買いの首都」は深センとの「国境」の街、上水だ。2010年下半期ごろはすでにMTR上水駅C3出口付近で中国人同士による粉ミルク、おむつ、チョコレート、ヤクルトなどの商品が売買されていた。当初は品不足になるほどではなかったため黙認されていたが、それが拡大。中国に商品を運ぶことで報酬を得る「運び屋」なるものの誕生につながっていった。

 運び屋が商品を買い付ける店は、ショッピングモール「上水広場」から徒歩数分のところにある新勤街(San Tsoi Street)と民生街(Man Shang Street)の間に集中している。粉ミルク、チョコレートなどの「定番商品」のほか、コーヒー、日本酒、ワイン、歯磨き粉、ハンドウオッシュ、紙おむつ、カレーのルーなどさまざまだ。通り沿いにあるマンションに入り上階には商品の倉庫になっていることもある。

 運び屋は、子連れの父親、30~40代の女性、年配者などさまざま。中国人のみならず、規制のない香港人もかなりいるため、ビザ規制後は香港人の姿がやや目立つようになった。中には小遣い稼ぎと思われる香港の若者もいる。陳列されている商品には、買い取り価格が表示され、その隣に「+○元」と書かれている。これが運ぶことに成功した場合に現地でもらえる成功報酬=もうけだ。その下に、受け渡し場所の名前や地図が書かれている。もうけは、アルコール類だと重く、大きいため報酬も大きいが、お菓子など軽く小さければ報酬も少ない仕組み。粉ミルクは1缶50香港ドルの程度のもうけ。香港からのミルク缶の持ち出しはで1人2缶と定められているため、ビザ規制前であれば1日5回往復すれば500香港ドル、20日間働いたら1万香港ドルだったが、規制後は、自分の持っているスーツケースに商品をうまく組み合わせてもうけを最大化する努力をする人もいる。税関が運び屋の荷物の監視を強化しても大勢の出入国者で手が回らず検査が後手に回っている可能性が高く、規定数以上を運び出す人もいた。

 受け渡し場所は、「大酒店」(=深セン駅にあるホテル)、深セン駅の3階にあるマクドナルド、「徳興水站」(シャングリ・ラ ホテル北側にある茶葉世界ビルの裏手)などがメジャーだ。しかし中国側の税関通過後、受け渡し場所に行く前に、税関出口と深セン駅の短い距離の間にある植木に座っている人たちが見える。一部の引き取り業者は上水で表示されていたもうけの価格より大きな報酬を提示して商品を買い取り、それを横流しする人もいるようだ。運び屋にとってはより大きなもうけとなるため、そちらに売ってしまうことも。徳興水站では運んできた商品を再び箱詰めしている光景が見られ、業務用ダンボール箱に商品を詰め、 ミニバンで「港貨店」専用の物流センターに向かう。このセンターから北京、上海などにも流されてもいるといい、消費者までしっかりと商品が届く一つの経済帯ができている。

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