行政長官選出をめぐる普通選挙案、否決 親中派は採決直前に退席

インタビューに応じたアグネス・チョウさん

インタビューに応じたアグネス・チョウさん

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 2017年の行政長官の選出方法を巡る選挙制度改革法案を巡り、立法会は6月18日採決を行い、賛成8、反対28の反対多数で否決した。法案の否決は議会の3分の1以上を閉める民主派が反対票と投じることが分かっているためある程度、予想されていたことだったが、採決直前に30人強の親中派が議場から退席したため、賛成票がわずかという想定外の法案否決となった。

親中派が掲げた普通選挙支持の看板

 今回、立法会に提出された選挙制度法案は、これまでとは違い1人1票という権利を得ることができたが、立候補者は親中派が多数を占める1200人の指名委員会による推薦と過半数の同意が必要であることから、事実上、親中派しか立候補できないようになっていた。そのため民主派は「假普選」=ニセの普通選挙として法案に反対する意向を示していた。

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 ただ、法案を巡って世論は真っ二つに割れた。植民地だったという歴史的背景もあり商業的自由はある香港だが政治的自由は制限されていたことから、「法案は完全ではないが、ないよりマシ」という消極的支持派が多かった。一方で「法案は共産党の息のかかった人しか立候補できないニセだから反対」という勢力もあった。これまでの世論調査では現実的な香港人の性格を反映し、ないよりマシ派を含めた賛成派が反対派を上回ることが多く、香港政府や中国政府はその数字を基に民意はわれわれの選挙制度を支持していると盛んに宣伝していた。

 今回の採決は17日から審議を開始。議員1人当たり最大15分という意見表明持ち時間を与えられたが時間が足りず18日に採決が持ち越されていた。そして採決に入ろうとしたところで、親中派議員の1人が、到着が遅れていた劉皇発が投票に参加できるようにするため15分の休会を求めたが、議長は投票過程に入ったため休会を拒否。すると突如、親中派議員約30人が議場から退場した。民主派の何秀蘭は立法会の退席者を除いた出席者の数のカウントを要求。その数は立法会の規定により流会にならない人数に達していたためそのまま採決を実施することになった。その結果、賛成8、反対28という数字という誰にとっても想定外の数字なった。なお賛成のほとんどは自由党の議員が投じたものだった。休会を求めた林健鋒(ジェフリー・ラム)氏は退場することで出席者が足りなくなって休会になることを狙ったとコメント。ただ、親中派内でコミュニケーションがうまくいかず一部が退場せず、そのまま採決になってしまったと告白した。同じく親中派の葉劉淑儀(レジーナ・イップ)氏は「(このような形での採決になってしまい)支持者に対して申し訳ないといいたい」と陳謝した。

 梁振英(CY・リョン)行政長官は「普通選挙がブロックされて、私、政府のメンバー、何百万の香港市民が失望している。今後2年は経済発展や民生の改善に集中していく」とコメントし、事実上、今後2年間は普通選挙についての話し合いなどは行われないこととした。一方、学生運動グループの学民思潮(スカーリズム)のメンバーで「学民の女神」と呼ばれる周庭(アグネス・チョウ)さんは「否決は当然のこと。私たちはこれからも真の普通選挙導入に向けた活動をしていかなければいけないし、ひいては1国2制度を守っていかないといけないと思っている」と力強く語った。

 立法会の前には賛成派、反対派の両陣営が集結。事前に立法会と警察が鉄柵を設けて陣営を2つに分けたため、ののしり合いや小競り合いが若干あったものの、大きな混乱は避けられた。彼らは独自ルートや報道などで否決される可能性が高いという情報が事前に得ていたこともあり、両陣営とも口では言わなくても心の中では否決されることを分かっていたことも大規模な衝突につながらなかった理由の一つだ。それでも否決が決定した時、反対派は大歓声を上げ、賛成派は親指を下に向けかつブーイングを出した。

 否決により2017年は従来通りの間接選挙での行政長官選となる。もし「真の普通選挙」が実施されるとしても東京五輪から2年後の2022年が最短だ。ただ、中国政府が再び普通選挙導入を進めるとは考えにくいほか、香港政府も再び普通選挙導入のための動きを止めるまたは棚上げする公算が大きい。一方、民主派側も、今後どのようにして民意を広げていくための具体的かつ強力な推進案がないことも事実で、民主派にも苦しさがある。7月1日は香港が中国に返還された日であるため祝日で、毎年デモ行進が行われており、どういった動きがあるのかが注目される。また、今年11月22日には日本でいう統一地方選挙にあたる区議会選挙があり、その結果が将来についての目安の一つになる可能性もある。

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