香港のメディア業界に激震 新聞、雑誌など相次いで休刊

8月16日よりセットで販売される「壹週刊」と「飲食男女」

8月16日よりセットで販売される「壹週刊」と「飲食男女」

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 7月12日から20日の1週間あまりで、立て続けに香港の紙メディア「新報」「成報」「忽然1周」の3媒体が休刊することが発表された。無料の新聞やインターネットメディアの影響で有料紙媒体が休刊に追い込まれる事態に、市民らの間では大きな話題になっている。

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 口火を切ったのは貴金属、金融、娯楽事業を手掛ける英皇集団(Emperor Group)傘下の「新報(Hong Kong Daily News)」。7月11日に同社ホームページ上で、近年赤字が続いていたため同12日付けで正式に休刊すると掲載。フリーペーパーの出現により発行部数が低下したこと、読者の習慣が変わったと指摘。改革に努めたが至らなかったとした。職員130人には補償金が支払われたという。同紙は1959年10月創刊で中国寄りのスタンスの媒体。同紙が発行する競馬雑誌「新報馬簿」は冷静な分析と豊富なデータで競馬ファンの支持を集めていたが、傘下雑誌の発行停止などについては明らかになっていない。

 17日には1939年5月1日創刊と76年の歴史を誇る「成報(Sing Pao Daily News)」が休刊した。同紙の親会社である「成報傳媒集団(Sing Pao Media Enterprise)」が高等裁判所から清算命令を受け、それに伴い同社の銀行口座が凍結。印刷代を支払うことができなかったためだ。臨時清算人は親会社の清算であって子会社の業務には影響はないとしている。同社取締役会の谷卓垣・主席は「16日夜に500万ドル注入するほか、長期的には年間1億ドルを再投資する」としたが、ここ数年発行部数と広告収入の減少から給与の遅配などがあった。22日現在、電子版の更新は続けられている。同紙は歴史ある新聞でもあり1950~60年代はシェア50%近くを占めるなど香港最大の発行部数を誇っていた親中派寄りの媒体だった。

 最後は20日に発表された「忽然1周(Sudden Weekly)」の休刊発表と、同グループ媒体の再編だ。「蘋果日報(Apple Daily)」などを発行する香港メディア最大手の一つ、壹傳媒(Next Media)は、忽然1周を8月7日号を最後に休刊させ、週刊誌の「壹週刊(Next Magazine)」、香港人の食のバイブル的存在である「飲食男女(Eat and Travel Weekly)」、女性向けファッション誌「Me!」を8月16日からセットで販売するとした。忽然1周で働く70人は解雇となる。同誌は1995年に創刊された週刊誌で、女性をターゲットに芸能ニュース、家庭、育児を中心に取り上げていた。2008年上半期には約20万部を誇っていたが、読者の雑誌に対する習慣が変化し昨年下半期は平均約7万8000部まで落ち込んでいた。販売収入のみならず、広告収入も減少し、2015年も回復せず雑誌の再編に追い込まれた。蘋果日報は基本的に反体制派であることから、香港経済を事実上仕切っている大手デベロッパーから敬遠されており、デベロッパー傘下の多数の有名香港企業から広告は出稿されにくい状況が続いていた。さらに昨年後半の普通選挙を求めるデモでは創業者の黎智英(Jimmy Lai)さんが率先してデモに参加するなどしていたことから、より広告が得にくくなり、経営環境が一層厳しくなったという見方も強い。

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