第6回立法会選挙 投票は深夜2時半まで続き投票率は過去最高に

深夜遅くまで多くの人が投票のために列を作った

深夜遅くまで多くの人が投票のために列を作った

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 第6回目の立法会選挙(定数70)が9月4日に行われ、重要法案の否決に必要な3分の1以上(24議席)を非建制派が確保できるかが注目される中、投票率は58.28%、220万2283人と過去最高を記録した。非建制派と呼ばれる反中国政府側が30議席を確保し、重要法案の否決する事が可能になった。

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 重要法案とは、2014の雨傘運動のきっかけとなった行政長官選の選挙方法、行政長官の弾劾や基本法の改正など。仮に3分の1を割り、制定される内容によっては外国企業にとって香港の魅力が失われかねないものだった。

 香港の場合、70議席の半分の35議席は、功能界別という産業界と区議会(第二)に配分される。特に産業別(金融サービス、教育、法律、医学など)は中国とのビジネスにも関係あることから多くが親中派といっていい。区議会は建制派が2人、非建制派は3人となった。 

 日本のような一般的な選挙は残り35議席で、香港島(定数6)、九龍東(同5)、九龍西(同6)、新界東(同9)、新界西(同9)の5地区に分けて選挙を行う。

 民主建港協進聯盟(DAB)を代表とする建制派(親中派)は強固な組織票があるのが強みだ。一方、非建制派は民主派と自決グループに分かれる。民主派の政党は、思惑の違いからこれまでに分裂を繰り返し、民主派の代表格である民主党ですら結党当初の勢いは失われつつあった。

 自決はもっと複雑だ。まず、中国語で「自決」とは「自分で決める」という意味で「前途自決」ならば将来のことは自分で決める=つまり「香港の将来は香港で決める」というスタンスが基本だ。雨傘運動の失敗で一国二制度がより脅かされていると感じている。ただ、手段が異なる。例えば、あくまでも中国・香港政府との話し合いを重視する政党から、半分暴力を肯定する政党または暴力とはいわないまでももっと激しく運動をするべきという政党まであり多種多様。特に本土派は、香港が「本土」という思想で若者が中心で強硬な手段も時によってはやむを得ないと考える。いずれにしろ、若者が少数政党を結成し立候補したため、選挙前は非建制派の票の奪い合いとなり、建制派が漁夫の利を得ると考えられていた。

  政党別に見ると、35議席のうち建制派閥は17議席から16議席に減らした。一方、民主派は18議席から13議席に議席を減らしたが、自決は6議席を獲得したため非建制派が前回より1議席増えて計19議席となった。これに功能別を合わせると30議席となり3分の1を超える議席となった。

 民主派が衰退して若者が躍進できた理由は投票率の高さ。最終的には58.28%、220万2283人が投票した。イギリスに住む留学生で一時帰国をした人がいたり、多くの香港人が予定を変更したりしたという。太古城にある投票所は9000人の人が登記していたが、従来の2つの投票所の1つが使用を拒否したため1つだけになった。そのため投票締め切りの22時30分になっても長蛇の列となり、投票所は22時半を超えても会場を閉じず延長することを決断。最終的には深夜2時半に全ての投票が終わった。自分の1票の大事さを実感している人が押し寄せ、投票所側も時間を延長するという英断を下した。

 香港は日本と違い住民票がないため選挙に行くには事前に登録する必要がある。年齢別で見ると61歳以上が前回より23.41%増、20万9629人増の101万5140人が登記した。それ以外の世代は2~5%しか増えておらず、お年寄りの投票権利資格者が圧倒的に増えたことになる。その上で、「自決の政党」が躍進したことは、相当数のお年寄りの票が若者に投票されたと推測できる。2047年に香港は1国2制度が終わり完全に香港に返還されるが老人たちは自分たちの孫の世代の候補者に将来を託したといえる。選挙は厳しい戦いになることは分かっていてが、それでも必死に戦ったことが結果につながった。

 この結果は既存の民主派の政党では満足できない人が多かった事も意味する。雨傘運動でも民主派の政治家は目立った活躍はできず、学生のみならず一般市民を失望させた。これが新しい立候補者に託してみようという方に流れ、その結果、多くの現職が落選した。

 非建制派が3分の1を確保したことは勝利ではなく、最低限の数字をクリアしたことに過ぎない。ただ、経済であれ、文化であれ中国の影響力が大きくなったことへの香港市民の懸念が3分の1を維持させたといえそうだ。自決派や本土派など計6人が当選したことに驚きを示す論調が多い中、現実には香港の若者は大喜びをしていない。どちらかというと意気消沈している人が少なくないのは、もっと新政党から当選者が出ると期待していたからだ。特に大学に通っている学生の失望感は大きく、その一部からは「移民」の声も出始めた。1997年以前、中国に返還される不安感から多くの香港人が外国に移民したが、それと同じ不安感が今の若者を覆っている。

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