香港政府・規劃署(Planning Department)と土木工程拓展署(Civil Engineering and Development Department)は11月7日、尖沙咀西(Tsim Sha Tsui WEST)、銅鑼湾・●馬地(Causeway Bay・Happy Valley)、金鐘・湾仔(Admialty・Wan Chai)の3地区に巨大な地下空間を開発する計画「城市地下空間発展(Underground Space Development)」を明らかにした。
市民と対話するためのイベント用にブロックでの予想イメージも用意
土地が狭く、人口が700万人を超える人口密度の高い香港では土地の有効活用は永遠のテーマ。高層ビル群に代表されるように「上」へと発展してきた香港が、今度は「下」に向かって発展していこうとする計画だ。
44ページにわたる事業計画案では、香港は道路のみならず歩道の狭さも問題だと指摘。地下街を開発することは、歩行者にとっては全天候型の場所となり、「人渋滞」の緩和も期待できるほか、歩行者が減る事で車の渋滞緩和、交通事故の減少にもつながり、密度が緩和されることで圧迫感も少なくなる。
香港政府が最重要視するのが「尖沙咀西」。弥敦道(Nathan Road)から西側のエリアの開発に主眼を置く。建設が進められている西九龍文化区(West Kowloon Cultural District)に、中国本土と香港を結ぶ高速鉄道の西九龍駅(West Kowloon Station)ができることから、これまで以上に尖沙咀が重要な地区になることを重視。一方で、現在の繁華街である海港城(Harbour City)やThe Oneなどから西九龍へのアクセスはあまり良くない。
原因の一つは「九龍公園(Kowloon Park)」であり、尖沙咀の中心地にある自然オアシスは高低差があり高齢者や身障者には使いにくく、敷地の大きさから広東道(Canton Road)と弥敦道および海防道(Haiphong Road)と柯士甸道(Austin Road)を東西と南北に分断し、このままでは西九龍文化区の完成後も発展しない可能性が想定される。そこで地下4フロア分の地下空間を九龍公園の下に建設し、地下に東西に3つ、南北に1つの地下通路を造成することで西九龍と尖沙咀への往来を楽にする。空間には地下鉄駅への連絡通路だけでなく、小売り、飲食、コミュニティースペース、休憩所、文化活動などのスペースも建設する。
銅鑼湾・●馬地周辺は、埋め立てを含め古くから開発が進められてきたところであるため、地上で新しく開発できるスペースはそれほど多くない。古い規格での開発だったため歩道は狭く、タクシーなどの自動車の駐停車スペースもあまりない。加えてMTRは港島線(Island Line)の北側に北港島線(North Island Line)の敷設を計画しており、開通後はさらに混み合う事が想定される。そこで銅鑼湾と天后(Tin Hau)という東西のつながりを密接にすることで、人の流れを分散させようと計画。北港島線の開通を見据えるだけではなく、そのさらに北側の海岸線にプロムナードを作ることで銅鑼湾北側の発展も行う。その鍵となるのが維多利亜公園(Victoria Park)の地下で、東西と南北に走る1本ずつの地下通路を中心に地下3階建てで、尖沙咀西と同じく、小売り、飲食、文化エリアの他、駐車場の設置を視野に入れている。加えて、長期的には香港大球場(Hong Kong Stadium)へのアクセス改善策も考慮したい考えだ。ただ、今回は●馬地への具体案は示されていない。富裕層が多い●馬地へのアクセス改善は地元住民が望まない可能性もある。
金鐘・湾仔エリアは商業エリアと住宅なが1つの区画に混ざっている。特に湾仔は1930年代からから開発されたため住民の憩いの場があまり無いこと、ゴミ集積場が真ん中の盧押道(Luard Road)にあるなど住環境が良いとはいえない。さらに軒尼詩道(Hennessy Road)と告士打道(Gloucester Road)の影響で湾仔の北側と南側が分断されているような状況であるため、地下通路の建設と歩道橋のさらなる設置が必要とした。
湾仔には今年、新しいショッピングエリアとして利東街(Lee Tung Street)ができたことからMTR湾仔駅を地下通路でつなげるほか、湾仔駅すぐ西にある修頓遊楽場(Southorn Playground)下に小売り、飲食店などが入る地下2階の地下空間を作る。金鐘については具体案が述べられていないが、湾仔が発達していくことで金鐘も発展させていきたいというスタンスのようだ。
一般諮問を受け付けるに当たり、香港政府は2017年1月25日まで湾仔修頓遊楽場など数カ所でエキシビションやワークショップを行うなどして、計画への意見を参考にする。募集期間は2017年2月6日までで、終了後は市民の意見を反映させながら専門家との協議、技術評価などを行ったうえでアップデートした計画案を発表するという。その後再び市民から意見を聞いてから、工事などに着手する流れを想定している。
●馬地=●は足へんに包