香港・中環のギャラリーWhitestone Gallery(UG/F., 57-59 Hollywood Road, Central, Hong Kong)で8月4日、日本人アーティストの渡辺おさむさんによる展示会「Sweet Summer」が始まった。香港での展示会は今回が2回目。
渡辺さんは東京造形大学デザイン学科卒業。スイーツデコレーションの技術をアートに取り入れた先駆者で、そのルックスから日本ではアート界のスイーツ王子などと呼ばれることもある。17年前に本格的に始めたというスイーツアートは、母親が洋菓子製造の先生だったことが大きく影響している。身近にお菓子があるのが当たり前の環境で育ったため、それをアートにも取り入れようと決めた。
渡辺さんの作品は、スイーツ以外の物でもまるで本物のスイーツのようにデコレーションされているのが特徴だ。作品の多くに登場する生クリームに見立てた「フェイククリーム」は、樹脂にアクリル絵の具を練り込んだものを実際のお菓子作りと同様に口金を使って絞ることで、本物の生クリームのように仕上げている。アイスクリーム、マカロン、ロールケーキ、ゼリーなどのお菓子パーツもすべて手作りで、レパートリーは数十種類以上に上る。アイスクリームは樹脂を本物のアイスをすくうのと同じようにディッシャーを使い、ロールケーキはスポンジ用、クリーム用の樹脂を巻いて作るなど、工程も実際のお菓子作りに近い。イチゴやレモンなどの果物のパーツはシリコンを用いて実際の果物の型を取り、そこに樹脂を入れ、色付けを施し本物そっくりの果物を作り出す。
年ごとに製作テーマを決め、「今年のテーマは水にまつわるもの」と渡辺さんは話す。「香港はハーバーのイメージがあったので、今回はペンギンやタコなどの海の生き物も多く製作した」とも。ギャラリーのショーウインドーに展示されている、チェリーやイチゴでデコレーションされた真っ赤なタコ「Sweet octopus」は、今回の展示会に合わせて作ったもの。かき氷の上に載ったペンギン「Punguin on shave ice」も香港が初公開となる。「普段は淡い色合いが多いので、タコの鮮やかな赤を作り出すは新しい取り組みだった。ペンギンの体部分は、フェイククリームが立ちすぎないよう滑らかにデコレーションを施していくのに苦労した」
樹脂は24時間かけて乾かし、大きな作品になると完成までに何カ月も時間をかけることもあるという。製作前にデッサンは行わず、イメージしたものをそのまま形にしていく。
今回の展示会では35点を展示し、早くも売約済みの作品も出ている。渡辺さんは「6年ぶりの香港での展示会。多くの方に来てもらい、また次回につなげられたら」と意気込む。
開催時間は11時~19時。9月10日まで。