香港・シャーティン(沙田)の好運中心(shop105,3F,Lucky Plaza , Shatin, N.T,H.K)に店舗を構えるコミック専門店「龍城(Dragon City)」が売り上げの減少と家賃の高騰から今月閉店することになり、店には連日閉店を惜しむ客が足を運んでいる。
同店は台湾や香港で使用される繁体字に翻訳された日本のコミックを中心に、日本語の日本雑誌、アニメ関連グッズなどを販売してきたが、電子書籍の普及に加え、無料の違法インターネットやアプリを閲覧する人が増加していることにより、コミック専門店としては立ち行かなくなったという。
現在日本のコミックは地元の書店にも並ぶが、日本のコミックだけを専門に扱うところは同店を含めて数店舗。他は旺角にあり、同店オーナーの揚聯輝さんは旺角も含め、多店舗展開していたこともある。
同店の閉店理由は売り上げの減少と家賃の高騰だ。繁体字で出版されるコミック1冊当たりの値段は28~38香港ドル(約372~505円)。それに対し、店舗の賃貸更新契約では30%近くアップした金額を提示された。1冊の利益は7香港ドル(約93円)程度だといい、現在でも6万ドル(約80万円)の家賃のために働かなければいけない状況になっていた。
揚さんはネット書店を運営することも検討したが、本を扱う以上在庫をどこかに抱える必要があり、在庫を抱えない方法では早さに追いついていけないと判断し、この商売から引退することを決めたという。
実は日本の漫画にそこまで興味がないという揚さんがこのビジネスを始めた理由は「周りの友人が日本のコミックの話をよくしていたから」と当時を振り返る。「女性がファッションの話で盛り上がるように、男性の友人がコミックの話で盛り上がるので、ビジネスにしたらもうかるかなと思った」と正直に語る。現在の人気タイトルは「ONE PIECE(ワンピース)」だが、「ドラゴンボール」「スラムダンク」などが売れている当時は、新刊の発売に朝から50人以上が並んだこともあったという。
同店で揚さんと一緒に働く謝さんは「閉店すると決まってからは、もう悲しくない。まずは休みを取れると思うとワクワクする」とすっきりとした笑顔を見せると、そのすぐ横に居合わせた常連客の謝嘉臣さんは「もう16年も通ってきたので本当に悲しい。中学生のころはお金も無くて今のようにビニール袋に入っていなかったから立ち読みさせてもらった」と話し、スーツ姿で両手いっぱいにコミックを購入して帰った。
店舗契約は12月31日までだが、営業最終日はまだ決めていない。「やめるならこれまで忙しくて楽しめなかったクリスマスは楽しく過ごしたい」と話す謝さんの顔は明るく、クリスマス前に終了する可能性も高い。