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香港伝説の「ジャンボ」桟橋が再点灯 水上レストラン再開は未定

約3年ぶりに明かりが灯った香港仔のフェリーピア

約3年ぶりに明かりが灯った香港仔のフェリーピア

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 日本人観光客も多く訪れていた伝説の水上レストラン「ジャンボ(珍寶)」が存在した香港仔の深灣碼頭に、昨年12月26日、補修をした桟橋が戻り、約3年ぶりに点灯した。ふ頭に加え、海上レストランを挟むように設置されていた「歓迎光臨、WELCOME、いらっしゃいませ」の文字が光るネオン看板も点灯し、観光遺産の復活に注目が集まっている。

昨年の12月20日に桟橋「太白碼頭」が修繕を終え、海上からふ頭に戻った

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 今回の再点灯の背景には、「太白」の関係者がある日、サンパン船上で生活を営んできた艇家と偶然話をしていると、「『太白』に再び明かりが灯ってほしい」という話になったことがきっかけとなったという。地元の人たちも「太白」の再営業を望んでいるが、灯りが点くことで、まず小艇に乗る機会を提供したり、記念品を販売するなど観光に繋がる動きに取り組み、地域の経済活動を活性化することを期待しているという。

 ふ頭にあった桟橋「太白碼頭」は、昨年10月20日、最初に修繕が終わり、香港仔避風塘の深灣に戻ったが、「その日は晴れ渡り、地元の人や修繕に携わった作業員たちも感動の帰航だった」と水上レストラン「太白海鮮舫」のスタッフは振り返る。

 当日は深灣碼頭に約15のブースが並び、地元の取り組みを解説したり、地元にちなんだグッズや食を販売した。地域とのつながりを強化し、「海鮮舫文化」への思い出を呼び起こすことを目的として、南区内の団体や「太白」と密接な関係を持つ団体約1000人に参加者を絞り、香港仔の住人たちでひとときを祝った。加えて、かつてレストランまで人を運んだ船が運航され自由に乗船できたり、ステージでは歌や楽器の演奏などローカルなプログラムが繰り広げられ、17時、桟橋に明かりが灯った。

 夜にふ頭で開催された「太白食神盛宴」は、当時、太白海鮮舫のエグゼクティブシェフであった陳満權さんが統括した。香港高等教育科技学院の教員と管理栄養学を学ぶ学生が協力し、カトラリーには、ナツメ(赤棗豆)を使った食べられるスプーンを提供したり、同科学院の応用研究成果でもある健康を意識した薬膳の「泡茶」なども盛り込んだ。

 日本人観光客にも人気があった海上船上レストラン「珍寶王國(Jumbo Kingdom)」は、もともと「珍寶海鮮舫(Jumbo floating restaurant)」と「太白海鮮舫(Tai Pak Floating Restaurant)」の2艘の船で構成されていた。「海上に浮かぶ竜宮城のような外観の建物」と言われ、実際レストランを訪れるためには香港仔避風塘から専用の船で海上のレストランまで行く。ストーリー感満載の演出も人気の理由だった。しかし、近年経営的にもあまりよくない状況であったところに、デモとコロナでとどめを刺され、2020年3月営業を停止した。

 その後、2022年6月に事態は動く。当時の親会社の経営ライセンスが切れ、「水上レストランはコストを削減するために香港から出て、停泊しながら新しい経営者を待つ」と発表された。6月14日、「珍寶海鮮舫」は46年ぶりにえい航される形で香港を離れたが、その様子は中継され、香港でも大きなニュースとなった。その後南シナ海で波浪が発生。「船体が傾き、船内に水が入ったことで沈没した」とされるニュースは世界各地に衝撃を与えた。この時、右側にあった姉妹船「太白海鮮舫」はえい航されず、同年8月に新しいオーナー「新邦行」の手に渡り、再開を期待する声もあがっていた。

 まもなく同エリアでは、「香港仔海鮮舫文化ツアー」が始まる予定で、毎日3便(10時、14時、17時)を運航する計画。17時の回はライトアップした桟橋を見ることもでき、40年以上の歴史を持つ太白小輪で、海鮮舫文化のガイドツも行う。船は微細藻による水処理装置「微藻孵化器」を通り、船から排出される水を浄化し、循環型社会に貢献していることなども解説する。ほかにも、同エリアで希少な黄唇魚の復活にも力を注ぐ。黄唇魚はかつて大澳地域に頻繁に見られたため「大澳魚」とも呼ばれるが、「水中のパンダ」とも言われることがあるほど、国宝級の絶滅危惧種とされる。「花膠(浮袋)は、金のように価値ある」とも言われる黄唇魚の繁殖にも乗り出している。

 太白海鮮舫によると、「『珍宝王国(JUMBO Kingdom)』の歴史も含めて新オーナーである「新邦行」が引き取り、アバディーン(香港仔)の歴史を進化させていく」という。一部のメディアではレストラン再開や再開時期について報道されたりいるものの、「具体的にはまだ何も発表しておらず、現在レストランを含めたさまざまな取り組みについて積極的に準備を進めている段階」とする。

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