香港の金融ビルが立ち並ぶ中環にありながらもローカルがゆ麺店として人気を博してきた老舗「羅富記」が1月25日、最後の営業日を迎えた。
中心地にあることから地元の人や同エリアで働く人、日本人も含めた観光客にも人気があった同店。蘇豪擺花街と德輔道中に2店舗を構え、朝8時から德輔道中は夜23時まで営業してきた。店内に入ったすぐの場所で、店主がかゆを煮、麺をゆでるキッチンが見える。かゆの大きなずんどうも置かれ、古いながらも清潔感のある環境で展開してきた。
創業者の羅家富は1920年に「羅富記」を創立。その子孫である羅●林さんが1948年に同ブランドを香港に持ち込み、故郷の中山市小欖鎮の名物である「炸●魚球」を受け継いだ。現在、羅錦基さんが羅家富さんの息子としてこの伝統を引き継ぎ、77年の歴史をつないできた。
1月23日、「羅富記のオーナーが引退して移民する」といううわさが広まり、25日の閉店が判明した。2店舗とも閉店する。店員によると、「引退が閉店の理由で、家族でカナダに移民する予定がある」という。
閉店前日の1月24日には、店の外に長蛇の列ができ、多くの市民が「最後の一杯」のために店を訪れた。香港郊外から駆けつけた人も含め、常に30人以上が行列をつくり、1時間以上待つ客の姿もあった。
「また思い出になってしまう」「子どもの頃から食べていた。以前は味を楽しんでいたが、今は感情を味わっている」と残念がる様子も見られた。1杯完食した後、さらにもう1杯違う麺などをオーダーする客もいた。店員も、客の流れが止まらない様子にやや疲れた表情で対応していた。
同店で人気のメニューに「●魚球」がある。香港ではすり身やスープのだしに使うことが多い●魚の肉に髮菜絲、陳皮茸、そして調味料を混ぜて粘り気を出し、作られた肉団子で、中国広東省の順徳区で生まれた。「弾力があり、肉質が新鮮」であることから、多くの人々に愛されてきた。自家製のソースを添えるが、このソースは、ハマグリ、中国の蒸留酒汾酒(フェンジュウ)、ショウガ、陳皮の細切りなどと一緒に数カ月漬け込んで作ったもの。味は「塩辛い」が、「この塩香蜆芥醤と一緒に食べると、さらにおいしさが引き立つ」という声が多い。他の名物料理には「豚腰豚肝がゆ」や「魚片がゆ」などがあり、鮮魚片がゆや豚の心臓、腸、粉腸を加えた「第がゆ」は多くの客が注文する人気メニューになっていた。
羅富記では、青地に赤字の●魚(ケンヒー)型のネオン看板が50年以上飾られていた歴史が老舗の象徴となっていたが、2010年、政府の規制で大型違法建築物として撤去され、現在はM+博物館に収蔵されている。
●=魚に綾のつくり、●=火に卓。