学ぶ・知る

油麻地の老舗茶餐庁「美都餐室」廃業か 72年の歴史を誇る老舗

シャッターが完全に降りた状態の「美都餐室」外観

シャッターが完全に降りた状態の「美都餐室」外観

  • 51

  •  

 72年の歴史を持ち、テレビドラマや映画の撮影にも多く使われた老舗茶餐庁「美都餐室(Mido Cafe)」(G/F, 63 Temple Street, Yau Ma Tei, Kowloon, Hong Kong Tel:2384 6402)が閉店したのではないかと話題になっている。店のシャッターは下りたままで、その前には貼り紙が張られているが、そこでははっきりと閉店するとは書かれておらず、香港市民はやきもきしている。

閉店を示唆するポスターには「Sayonara」の文字も

[広告]

 昔からこのエリア一帯は、「大排●」「甜品店」などの飲食店が多く軒を連ねており、美都餐室も1950年1月にオープンした。唐楼の建築様式で、内部は吹き抜けがあり開放的な空間であるほか、窓は緑色のフレームに色付きのガラスがある特徴的な設計で知られる。夕暮れ時にはガラスを通して光が入ってくるため店の雰囲気も独特で、日本人観光客にも人気が高かった。半世紀以上の歴史を重ねた結果、日本のガイドブックでも毎回掲載されるなど、インスタ映えする場所としても人気だった。「昔の香港を再現したり体験したりできる場所」とされている。

 テレビドラマや映画の舞台にもなり、「PTU」、「酒店風雲(Revolving Doors of Vengeance)」「廟街・媽・兄弟(Street Fighters)」「九龍冰室(Goodbye Mr. Cool)」「追龍(Chasing the Dragon)」「蘇絲黄的世界(The World of Suzie Wong)」「阿飛正傳(Days of Being Wild/欲望の翼)」「星月童話(Moonlight Express/もういちど逢いたくて)」など多くの映画に登場。そのほか、アニメ「マギアレコード魔法少女まどか☆マギカ外伝」のあるシーンも「美都餐室」を参考にしたのではと話題になるなど、多くのシーンに登場してきた。

 大衆食堂「茶餐庁」でありながらも、本来は軽食を楽しむ「冰室」でもあり、同店では、菠蘿包、錦滷雲?紅豆冰、?排骨飯などが名物料理として知られていた。

 状況を全て変えたのは新型コロナウイルス。香港の飲食業界は、2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の経験と中国のゼロコロナ政策に合わせる形で最も厳しい防疫対策が取られ、18時以降は店内飲食禁止となるなど、最も厳しい経営環境に置かれた業界だった。同店も2020年には3月30日から2週間、営業を停止したほか、2022年3月1日から5月まで2カ月間にわたり一時休業。その後、2カ月間営業したものの、7月に入ってから今年2度目の休業をしていた。

 現在はシャッターが下ろされ、店の前に掲げられた貼り紙には日本語の「Sayonara」のほか、イタリア語の「ciao」、スペイン語の「Adios」、フランス語の「adieu」、中国語の「再見」、bye-byeを「拜拜」と漢字で書かれた英語の6カ国語で書かれている。同店の電話も現在はつながらない状況だ。

 貼り紙がネットSNSで公開された後、「香港を代表できるランドマークを失ったのは惜しい」という声もあった一方、「料理の質が昔より落ちていた」「値段が高すぎ」「観光客向けのレストラン」と書き込む市民も多くいる。

 店頭には、「有縁我●一定會再見…(ご縁があれば必ずまた会える)」とも書かれており、一時休業なのか、完全に閉店したのかはっきりせず、今後営業再開されることを祈りながら状況を見守っている市民が多い。

 大排●=木へんに當、●=さんずいに鹵、●=火へんに局、●=口へんに地。

エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース