国際的に著名な絵本作家でありマルチメディア・アーティストでもある岩井俊雄さんの展覧会「100-Story 100 Stories: Toshio Iwai's Art Journey」が現在、香港大学美術博物館(UMAG)(1/F & 2/F, Fung Ping Shan Building, UMAG, HKU, 90 Bonham Road, Pokfulam, TE3917 5500)で開催されている。
開幕式は6月13日に行われ、岩井さんも来港し、在香港日本国総領事館の三浦潤総領事、共同キュレーターの陳詠欣さん、李卓翹氏さん、盧●欣さんらが出席し、華やかに幕を開けた。
メディアアートの分野でも国際的に高い評価を受けてきた岩井さん。創作の原点は、幼い娘と交わした「数字遊び」から生まれた絵本作りで、そこに学びと楽しさを融合させた独自のビジュアル言語を築いたという。娘のために手ずから紙の造形作品を制作するなど、家族との関わりを通じて創造性を育んできた。幼少期に親しんだ書籍や記憶がその土壌となり、現在に至るまで「日常の質感から生まれる創造」を体現し続けている。
岩井さんは「才能は遠いところから降ってくるものではなく、日常の質感から生まれる」と話す。「デジタル化と人工知能の進展が急速に進む現代の中で、手仕事の温かみや人と人とのつながりの価値を改めて提示するのが今回の展覧会」だという。
展示の冒頭を飾るのは、世界中の子どもたちに愛される絵本シリーズ「100階だてのいえ」。縦に開くこの絵本では、フロアごとにユーモラスで不思議な世界が広がり、「子どもたちには恐れず探究する勇気を、大人には日常の中に潜む好奇心とシンプルさを再発見してもらいたい」とする。会場は美術博物館の吹き抜けを使って、縦に本の中の絵やメッセージなどをパネルで紹介している。
展覧会では岩井さんの幼少期の記憶をたどり、創造力の根を育んだ書籍や、娘のために丹念に作り上げた紙の造形作品も展示する。家にあった菓子箱とひもを使って、関節の部分を金具のリベットで固定した人形や手書きのカレンダーなども並べた。
ほかにも、岩井さん自身が教科書の右下ページに落書きしたパラパラ漫画や、びっくり箱や両手が使える肩にひっかける構造の便利傘などのアイデアを書き連ねた自前の工作ブックなども見ることができる。
シンプルな素材ながら教育的な知恵と深い情感が込められ、デジタル技術が支配する時代にあって「手で作ること」の自由と人間関係の大切さを思い起こさせる内容に仕上げた。
会場内に掲げられたメッセージパネルには「大人は世界とつながることへの最初の没入感や感情を忘れてしまい、子どもの考えを理解するのに苦労することがある。この興奮を理解し、それが大人になっても持ち続けられるように努力する価値はある」と書かれている。
開館時間は9時30分~18時(日曜は13時~)。月曜・祝日・大学休暇休館。入場無料。会場は香港大学キャンパス内の馮平山樓(Fung Ping Shan Building)1階・2階。馮平山樓の地階入り口から入場する。9月27日まで。
●=草かんむりに止