ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が5月27日、「グローバル・ウェルス・リポート2026」を発表し、香港がスイスを僅差で抜き、初めて世界最大の越境資産拠点となった。「越境資産」とは、投資家や富裕層が自国以外の金融機関や市場に預けている資産を指す。クロスボーダー資産やオフショア資産とも呼ばれ、現金預金や株式、債券、投資信託などが含まれる。
2025年の世界の金融資産は前年比10.7%増の333兆ドルに達し、2021年以来最大の伸びを記録した。実物資産を含めた純資産は9.3%増の550兆ドルに拡大しており、地政学的緊張や貿易摩擦が続く中でも資産成長は加速している。
注目すべきは、香港がスイスを僅差で抜き、初めて世界最大の越境資産拠点となった点。報告書によると、香港の越境資産は10.7%増の2兆9,000億ドルに達し、主に中国本土からの資金流入と活発な株式市場のIPO活動が成長をけん引した。香港は中国資本の「世界市場への玄関口」としての役割を強めており、今後も年平均9%の成長が見込まれているという。
スイスも同規模の2兆9,000億ドルを維持したが、成長率は7.6%にとどまった。西欧市場を中心とする顧客基盤は安定性を強みとする一方、急成長市場への依存度が低く、香港やシンガポールの勢いには及ばない。シンガポールは10.3%増の2兆1,000億ドルとなり、アジアで最も分散された資産拠点として存在感を高めている。
地域別では、中国本土が前年比15%増と突出した伸びを示し、2030年まで年平均9%の成長が予測される。アジア太平洋地域(中国除く)も9.2%増と堅調で、AIサプライチェーンやデータセンター投資の拡大が追い風となっている。北米は7.4%増、西欧は15.3%増と予想外の好調を見せた。中東・アフリカも12.3%増と新興市場の勢いを反映している。
さらに、報告書は新興市場の台頭を強調している。インド、ブラジル、メキシコを中心に、2030年までに約12兆ドルの金融資産が新たに生まれる見通し。特にインドは2兆ドル以上を積み増すとされ、富裕層人口の急増が資産運用業界に大きな機会をもたらす。BCGは「新興市場の富裕層は依然として十分にサービスを受けていない」と指摘し、銀行や資産運用会社にとって成長余地が大きいと分析する。
アジアでは初の大規模な世代間資産移転が始まっており、家族経営企業や富裕層の資産承継が今後10年の重要課題となる。さらに、AIの導入により、資産運用業界の構造が急速に変わりつつあり、金融計画の自動化や顧客離脱予測などが既に実用化されている。BCGは「単なるツール導入にとどまるか、AIを基盤に業務を再構築するかで競争力に大きな差が生じる」と警鐘を鳴らす。
香港が世界最大の資産拠点となったことは、香港が依然として国際金融センターとしての地位を維持していることを示す。昨年、香港はIPO(新規株式公開)件数・調達額でも世界一を記録しており、資本市場の活力が国際的に評価されている。中国本土資本との結び付きが強く、規制や経済動向に左右されやすいリスクも抱えるが、旺盛なIPO市場と資産流入の両輪で香港の国際金融センターとしての存在感は落ち込みから回復したという見方も強い。
今後はシンガポールやスイスとの競争が激化する中で、香港がどのように持続的な成長を確保するかが注目される。