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外国の軍艦が寄港した灣仔の分域碼頭、正式に閉鎖へ 解体工事後は消防署に

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 灣仔(Wan Chai)北西部にある分域碼頭(Fenwick Pier)が2月6日、一般開放の最終日を迎え、2月11日に正式に閉鎖される。その後、解体工事が始まるが、その前に一目見ておこうと別れを惜しむ香港人が多く訪れている。

アーケード内ではおみやげ品などのセールも

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 同施設は、元々はジョージフェンウィック(George Fenwick)らが破産した造船会社を1880年に買収し、分域摩利臣公司(Fenwick & Morrison Co.)の名で再出発したことに起源がある。1887年にフェンウィックは独立し分域船廠 (Fenwick & Co.)を立ち上げ、当時の海岸線でトラムが走っていた莊士敦道(Johnston Road)にプライベートのふ頭を建設した。その後、埋め立てによりふ頭も何度か移動を余儀なくされ、1970年代に現在の場所に落ち着いた。

 ビクトリアハーバーの最大の特性は水深が深いことで大型船が寄港できる点。イギリスが香港を占領したのはこの点が大きな要因の一つだが、天然の良港ともいえるビクトリアハーバーには、特にベトナム戦争時にアメリカ海軍の補給基地ともなり、アメリカ海軍の事務連絡室が開設された。アメリカ海軍だけではなく世界中の軍艦がここに寄港した歴史がある。

 ふ頭を運営しているのは1950年代前半に設立された軍人輔導會(Servicemen's Guides Association/SGA)で、これまでに延べ126万人の水兵が利用し、最盛期は1回で14カ国、5万人の海軍兵士に対して各種サービスを提供した。広東語と英語の対照表などがついた香港のガイドブック「Guide to Hong Kong」を毎年作成し配布していたが、2020年が最後の発行となった。

 分域碼頭のそばにある駱克道(Lockhart Road)や謝斐道(Jaffe Road)周辺には多くのバー、レストラン、さらにはストリップ劇場などがあるが、飲み屋街として発展しているのは、当初は水兵をメインターゲットとしたためだ。

 1990年代に入り、中環と湾仔を埋め立てる「中環及灣仔填海計劃(Central and Wan Chai Reclamation)」が推進され、その結果、皇后碼頭(Queen's Pier)が移動し、新しく龍和道(Lung Wo Road)が出来たり、MTR沙中線(Shatin to Central Link)を建設中だ。つまり、このプロジェクトの影響で海岸線が北に移動し、分域碼頭はふ頭としての機能を失った。現在は、理髪店、雑誌店、テーラー、酒販店、宝飾店、レストラン、土産店など10軒余りが店を構えている「海軍商場(Fleet Arcade)」と呼ぶ小さなショッピングモールとなっている。昔はここにマクドナルドの支店があり香港で唯一ビールとワインを提供していたが2004年に閉店した。当時使われていた椅子などがまだ残っており、昔の香港の一ページを今でも感じることができる。

 施設内のイタリアンレストラン「Gia Trattoria Italiana」は、本格イタリアンを食べられると人気もあり、埋め立てられる前はビクトリアハーバーをは挟み美しい九龍側の夜景がみられることからデートスポットとしても人気があった。

 解体終了後は、ここに会議展覧中心(HKCEC)の向かいにある港灣消防局( Kwong Wan Fire Station)が移動して、新しい消防署が建設される。

 通常は会員制施設だが現在は入場時に申請票に名前と電話番号を記入すれば無料で入ることができる。しかし既に閉鎖されているエリアも多い。開放時間は10時30~18時30時。最後日の11日は閉鎖の記念式典が行われる予定。

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