香港の九龍半島、彌敦道(ネイザンロード)から少し入った油麻地・窩打老道で、1913年から続く果物市場「九龍水果批發市場」が100周年を迎えた。
香港政府は同エリアの一部の建物を1990年に三級建築、2009年に二級建築に指定している。230を超える果物店が集中し、多くの歴史ある2階建ての建物が並んでいる。同エリアはもともと1930年頃から魚、家きん、野菜などの市場が区画ごとに形成されたが、60年代にそれらが長沙湾に移転され、果物市場が残ったという。
香港での果物の中央卸売市場となっている同エリアは日付が変わる深夜12時頃になると毎日何台ものトラックが到着し、それと同時に活気づいていく。辺り一面に果物の段ボールが置かれ、翌1時頃になるとセリが始まる。卸売りの場所と販売の場所は少し離れているため、時間を追ってにぎやかな場所が違う。
同エリアで100年、4世代で遊炎記を営む區さんは、毎日深夜2~3時に果物を仕入れる。トラックが到着した後、最初は高値で取引され、品数やクオリティーの良い果物が減っていくと同時に仕入れ値が下がっていくため、「この時間が一番狙い目」と話す。4時を過ぎると購入客が動き始め、6時頃には活気づくという。
卸売場と販売店を結ぶ石龍街にある16軒の店は特に古い建物が並ぶ。建物の内部は2階構造で、日差しから果物を守るための冷蔵庫的な役割を果たすスペースになっているという。現在の1カ月の家賃は約15000香港ドル。このエリアでも高騰しているため、夜間8000香港ドル、日中7000香港ドルと別々のテナントが入っている建物もある。
米国や東南アジアの物を中心に、中国や日本からの果物も並ぶ。長野県直送の桃は1箱6個入り630香港ドル、2個88香港ドルで販売し、香港内の各スーパーよりも低価格で購入することができる。
過去には騒音問題などにより、政府の移転計画もささやかれた同エリア。區さんは、「移転させたいという圧力は感じるし、将来は分からない」としながらも、「ここは人と人の関係が濃く、娘は平日は普通の仕事をしているけど週末は手伝ってくれたり、夫婦で時間を交代してやったり協力をし合いながらやっている」と笑顔を見せる。