ラーメン激戦区の香港に12月23日、魚介系豚骨ラーメン「東京アグラ」が灣仔(Shop A, G/F., 1-19 McGregor Street, Wan Chai, Hong Kong Tel: 2886 3226)にオープンした。
オーナーシェフの長谷川忍さんが2011年に尖沙咀で経営していた「Agura東京ラーメン」がルーツの同店。尖沙咀を閉めた後、長谷川さんは大手日系レストラングループの誘いを受け、観塘のショッピングモールにラーメン店を開いた。しかし、客からは味についてのクレームがないにもかかわらず出資側が味について注文をつけるなど方向性の違いが鮮明になり、わずか数カ月で袂(たもと)を分かった。
そしてあらためて再出発を決意。今回の店に関しては長谷川さんの考えに理解を示す新たな出資者がいたことが再オープンを容易にしたという。香港で飲食業をする場合はパトロンとの関係、特にシェフの考えをどれだけ尊重してくれるのかが非常に重要であるかをうかがわせる。
長谷川さんは同店のユニホームであるTシャツに「豚骨バカ野郎」の言葉を入れた。日本全国の約400ラーメン店を食べ歩き、ほぼ独学でラーメンを勉強してきたことを振り返り、「ラーメンの素人がここまでになった」という豚骨ラーメンへの思いと自負があるという。10時間煮込むスープは豚のゲンコツや背骨、豚足などの肉類のダシと魚介類のダシをあわせたダブルスープ。「スープより苦労した」というチャーシューは八角を入れない。麺も自ら開発ストレート麺を信頼できる業者に託し製造する。
こだわりは店内にも及び、典型的な日本のラーメン店というより、さまざまな人が入りやすいようにカフェのような雰囲気にしたほか、店のフォントも独自に制作したものだという。
「AGURA特製ラーメン」(118ドル)は塩としょうゆの2つの味から選べる。2種類のチャーシュー、メンマ、のり、ネギ、たまごがつく。スープは魚介類の風味が効かせ、くどくないように仕上げた。「豚骨魚介じょうゆスペシャルラーメン」(88香港ドル)も同店のお勧め。つけ麺では「豚骨魚介塩レモンつけ麺スペシャル」(95香港ドル)、「AGURA特製つけ麺」(125香港ドル、塩/しょうゆ)などがある。
「替え玉」(12香港ドル)、「キャベツ」(10香港ドル)、「つけ麺スープ割り」(無料)などトッピングも充実。同じメニューばかりだと飽きやすい香港人相手にはリスクが伴うが限定メニューをまず提供し、好評であればレギュラーメニューに昇格させる予定だ。現在は「豚骨トマトつけ麺」(88香港ドル)などをメニューに並べる。
香港のレストランでよく見られる「味のブレ」への対策は長谷川さんが不在時にも同じクオリティーを提供し続けられるよう、材料の使用量をグラム単位で設定。スープは専用の機械を使って指定した数字になるまで調整しないと店に出せないという基準を設けた。人材面に目を向けると、香港人は日本人と違いすぐ辞める傾向もあると言われるが、「ラーメンはもうかる商売であること」を伝えているという。「私が雇ってる香港人はそれまでにもラーメン店で働いた経験がある人ばかり。彼らについてきてもらうには、自分の圧倒的なスキルを彼らに見せること」とも。
常に研究を欠かさない長谷川さん。「情熱」、「好き」という言葉で表現するが、「100香港ドル近いお金を支払っていただくので中途半端なものは出せない」という強い責任感が根底にある「ラーメン馬鹿野郎」であり「職人」だ。
営業時間は、ランチ=12時~15時30分、ディナー=18時~22時。日曜定休。