第三者プラットフォームの「AppAnnie」のデータによると、Uber香港とUber Eatsのオールタイム・ダウンロード数は他のプラットフォームより多く、一つのアプリで6000を超える世界のマーケットに対応できる利点を持つ「Uber Eats」。日本でのUber Eatsはバイク配達が多い一方、香港市場は、ビルが密集している環境から、バイク配達と同時に徒歩配達も多い。「香港でミールデリバリーサービスを展開するに当たってのハードルは、元々この都市の利便性が良い点。オンラインのミールデリバリーの利点をアピールし、教育することが必要と考える」と、Uber Eatsのジェネラルマネジャー・Elisa Janiecさんは話す。
同社のサービスは、グローバルな展開すると同時に徹底して現地化しており、Uber Eatsは継続的に香港の顧客需要インサイトを重視してきた。「例えばコロナがはやり始めた時期に、飲食店の営業制限やリモートワークの影響で、注文の需要もオフィスエリアから住宅街に変化したが、ユーザーが気になる安全面を最優先し、すぐにアプリを再デザイン。『コンタクトレス・デリバリー(置き配)』を簡単に選択できるようにし、玄関前に配達することによって最低限の接触を実現した」とJaniecさんは話す。配達員に保護具(PPE)を配布し、厳しい時期には14日にわたり財政的なサポートを提供するなど、配達員の安全への配慮も示した。2021年に入り、保険プログラム「Delivery People Insurance Package」をローンチし、一人一人のUber Eats配達員が仕事中に遭うあらゆる事故、けがに対し、保険でカバーできるようにしている。
飲食業界にとってかつてない困難な状況だったこの2年間、イートイン時間制限の影響下でも、経営が続けられるようにと、Uber Eatsのようなオン・デマンド・ミールデリバリーを採用する飲食店が多かった。そこでUber Eatsは連携する飲食店に対しては、初回の手数料を免除するほか、独立系で展開する店に3カ月分のサービス利用の手数料を軽減するなど、飲食店が一つ一つの注文で得る利益をできる限り増やせるようと努めたという。
このような厳しいコロナ禍の状況の中で、Uber Eatsのユーザー数は2020年に4倍も増加し、導入する飲食店数も倍増した。Uber Eatsをフレキシブルな収入源と考える香港人も多くおり、実際に活動している配達員の数も2019年より400%増え、配達した注文数も270%増を記録した。家やオフィスにいる時間が多くなったことで、注文の平均金額が22%も増えた。よく利用するシチュエーションはランチ(35%)や夕食(34%)、アフタヌーンティー時間帯(23%)で、リモートワークによって食事時間が18時に早まる傾向も見られたという。利用が増えることに加えチップも増え、12カ月内で6,000香港ドル近くのチップを払う気前の良い顧客もいたという。イートイン制限が厳しかった時期には、ビーガン、ベジタリアンフードや健康志向の飲食店によるへルシーな食事注文は800%増と見込み、健康重視の傾向も見られた。
今後はUberのプラットフォームをより使いやすくアップデートしていくほか、「今年はマーケティングと飲食店への投資を重視し、ブランドとパーフォマンス、そしてローカル飲食店へのポスト・コロナ・サポートを確実に行っていきたい」とJaniecさんは意気込む。コロナ禍における変化は一時的なものでなく、永続的に食事習慣を変えたと考えており、ポスト・コロナでもミールデリバリーへの需要が強まると予想している。「自社リサーチによると、70%の香港人はミールデリバリーを試すことに対して興味を持っている。既に利用している香港のユーザーは、もはやアジア太平洋地域で最も頻繁に注文するユーザー。ワールドワイドのネットワークを通じて、オーストラリアや台湾など、コロナにおける影響がそれぞれ違う地域を参考にしても、どの地域でもオンラインミールデリバリーへ強い要求があり、生活の一部になったともいえる」。8月時点で、Uber Eatsは日用品類の配達はまだ提供してないが、数週間前には3万人のUberとUber Eatsユーザーに向けてアンケートを行い、オンライン購買習慣を調査した。その結果、60%の回答者は「日用品の選択肢が足りない」とコメントし、40%は1時間以内のミールデリバリーのほか、「アパレルや家電、医薬品なども配達してほしい」と回答した。
マーケティング施策を倍増させると同時に、Uber Eats香港では最近「Tonight, I’ll be Eating」キャンペーンを展開。芸能人の起用と#makelocalfocusを使って、1000以上の小型や中型ローカル飲食店を改めて紹介し、まだ知られてない多くの香港飲食店をサポートしている。「このワールドワイドキャンペーンを香港で実施することで、広告などのプロモーションに1,000万香港ドル相当の予算を投入し、香港にある小型・中型のローカル飲食店にスポットライトを当て、できる限りの力になっていきたい。」という。このキャンペーンを通じて、年内は30万以上の新規客加入と40~60%増の新規飲食店登録を目指す。「そのほか、新規客の30日配達料無料、地下鉄駅での広告ジャックなど、今年はさまざまな新しいチャレンジを行い、ブランドとプロモーションのコストも今までの10倍以上の資金をかけているため、今後も期待してほしい」と締めくくる。