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「759阿信屋」創業者・林偉駿さん死去 「おしん」を店名に市民に寄り添う店づくり

故林偉駿代表(右)の好きな言葉は「克己復礼」。価格を抑えることで誰もが良いものを手に入れることができるようにと走り抜けた

故林偉駿代表(右)の好きな言葉は「克己復礼」。価格を抑えることで誰もが良いものを手に入れることができるようにと走り抜けた

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 日本商品を中心とした並行輸入やオリジナルパッケージで、お菓子や麺、飲料を加工品を販売する「759阿信屋(おしんや/759 Store)」の創業者である林偉駿(Colis Lam)董事總経理が8月18日、養和医院(Sanatorium Hospital)で死去した。61歳だった。死亡原因は明らかにされていないが、長年糖尿病を患っていたという。

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 「759阿信屋」は電子・通信関係の商品を取り扱う上場企業の「CEC国際控股(CEC International Holdings)」のグループ会社で2010年に創業した。「人気の高い日本の商品を香港の代理店を通さず日本と同レベルの価格で香港市民に提供したい」という林董事總経理のコンセプトの下、諸経費を省いて利益が38%になるように設定し、同じ商品でも為替変動に応じて料金も変動する仕組みを構築した。円安を背景に、薄利多売であることから、規模によるコスト低減を狙って店舗数を一気に拡大。会員カードを使えば割引を受けられるようにするなど顧客の囲い込みも行った。出店場所も公営住宅に設置された商業用エリアやショッピングモール、またはその近くに出店することで香港市民の生活に密着することを意識し、あっという間に「市民権」を獲得した。店名は同社の親会社の証券コードとNHK連続テレビ小説「おしん」を組み合わせ、同社の弱点でもある「人気商品を常に用意できる保証がない」「欠品による棚の変化が多い」という環境を香港市場ならではの棚の入れ替えの「新鮮さ」として捉えさせ、リスクを逆手にとったセールス手法が受け入れられてきた。

 スキンケアやコスメなどを扱う「KAWAIILAND」、冷凍食品専門の「急凍食品市場」、ワンタン麺の店「759雲呑麺」など7業態にまで事業を広げ、支店の総数は200を超える。

 林董事總経理は1999年にCEC国際控股の主席に就任。30年以上に渡る電子・通信業界での経験を生かして順調に経営を行ってきたが2010年に全く業界の異なる小売業界に進出。香港社会からも驚かれた。大小かかわらずメディアのインタビューにも多くの時間を割く懐の広さを持ち、訃報を受けて香港の各メディアや記者が多くのコメントを寄せている。頭の中にある1年後、3年後の出店計画や社会の様子までをも、方程式を解くように滑らかに話す姿が印象的で、かつ自分が好きな麺の店までラインを増やしてしまうほどおちゃめな一面も持ち合わせていた。

 ただ円安を前提としたビジネスモデルは為替変動の影響が大きく、2016年ごろから少し円高に振れたこともあり不採算店店舗の整理を進めるなどもしてきた状況があった。CEC国際控股の2018年4月期の決算は純損益が前年の4,999万香港ドルから3,287万香港ドルと赤字幅は縮小したものの3年連続で赤字を計上。特に電子事業の方が足を引っ張っていたという。加えて小売業も売上高は前年比8.1%減の18億4733万香港ドルと減収だったが、店舗閉鎖などによるコスト圧縮が功を奏し620万ドルの営業黒字を計上していた。今回の訃報を受け、CEC国際控股のトップには小売業務を統括していた鄧鳳群執行董事が昇格した。

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