香港政府は昨年12月5日、中環(Central)に香港のニュースの歴史をたどることができる「香港新聞博覧館(Hong Kong News-Expo / HKNE)」(2 Bridges Street, Central Hong Kong TEL 2205 2233)を開館した。イギリスの植民地、中国共産党の影響など時代に翻弄(ほんろう)されてきた香港のメディアの歴史が分かる場所として注目を集めている。
イギリスの植民地だったころの香港は、現在のシンガポールに近く政府批判さえしなければ報道の自由はある程度、保証されていた。1997年、香港が中国に返還された直後は中国政府も香港にあまり干渉しなかったこともあり、パリに本部を置く「国境なき記者団(RSF)」による世界報道自由度ランキングで香港は2002年、18位にランクイン。しかし、年を追うごとに中国政府の圧力が強くなり、2018年の最新ランキングで香港のスコアは29.04(数字が低いほど評価が高い)で、世界180カ国・地域のうち70位と2002年と比べて大きく落ち込んだ。ちなみに1位は7.63のノルウェーで、日本は28.64で67位と香港とほとんど変わらないポジションにいる。
HKNEの建物は、1883年にキリスト教の関連団体アメリカの美國公理会(old American Congregational Mission)によるキリスト教を伝道するためのホールとして建設された。孫文もここで洗礼を受けている。現在の建物は1953年に建設され街市として使われ、2011年に第3級の歴史的建造物に指定された。元々この一帯は多くの新聞社がオフィスを構えており、その名残で、鴨巴甸街(Aberdeen Street)周辺には数件ながら小さな印刷工場が今でも店を構えている。香港政府はその後、歴史的建造物を再活用する「活化歴史建築●伴計劃(Revitalising Historic Buildings Through Partnership Scheme.)」の中でこの建物をニュースの博覧館として再利用することを2013年に決定。8,530万香港ドルを投じて2016年から工事を行っていた。
面積は1万平方フィートで、ニュース最初の中文の新聞の紹介や英語の新聞、日本統治下での報道のあり方、公営住宅をつくるきっかけとなった1953年の石硤尾(Shek Kip Mei)での大火、1997年の中国返還、2003年の重傷急性呼吸器症候群(SARS)、2014年の雨傘運動など香港の激動の歴史を振り返ることができる。また、無線電視(TVB)に代表されるテレビの発展や有線電視(i Cable)の参入で24時間態勢の報道が可能になったことなども知ることができるほか、各局のロゴがついたマイクも展示。香港の街並みとしても欠かせない新聞スタンドの数は最盛期2000あったが、現在は100まで減ったことなど多彩なメディアの情報を網羅している。
HKNE側では初年度は来場者数を10万人と予測している。入場は無料だが、維持補修費がかかるため寄付や物販収入で200万香港ドルの収入を見込んでいる。今後2年間は香港政府から最大で500万香港ドルの補助金が支給される。
開館時間は10時~19時。月曜休館。
●伴=人へんに火。