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香港4大大富豪の世代交代完了 2番目の富豪、ヘンダーソンの李兆基主席が引退へ 

ヘンダーソン傘下のタウンガス

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 香港4大デベロッパーの一つ、恒基兆業地産(Henderson Land Development)の李兆基主席が91歳と高齢になったことから経営から引退を考えていることを3月20日、明らかにした。予定では5月28日の取締役会で決定することになっている。トップは2人の息子が継ぐことになるが、今後は取締役として留任し息子のバックアップする予定だという。これで戦後の香港経済をけん引してきた恒基兆業地産、長江和記実業(CK Hutchison Holdings)、新鴻基地産(Sun Hung Kai Properties)、新世界発展(New World Development)の4大デベロッパーの第1世代全てが経営から引退することになった。

 李兆基主席は1929年広東省順徳に第4子として生まれた。そのためニックネームは「四叔」と呼ばれている。ウォーレン・バフェットのように優良株を多くもっていることから、香港経済に何かが起こるとメディアはこぞって彼の意見を聞きに行ったが、それは小さい頃からビジネスの才覚があり父親の事業を手伝っていたこととも関係する。1948年に1,000元を携えて香港に移住する。1958年には郭得勝さん、馮景禧さんら合計8人で「永業」を創業し不動産業界に進出した。さらに1963年になると李兆基さん、郭得勝さん、馮景禧さんの3人は事実上、独立する形で「新鴻基地産」の前身となる「新鴻基企業」を設立し、副主席に就任する。

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 1965年は香港に金融不安が起こるなど経済が減速し土地の価格は低迷した。しかし、必ず不動産価格は復活すると確信していた3人は、安値でたくさんの土地を買い、約3年間で20棟のビルをあえて建設する。彼らの読み通り香港経済は再び回復基調に乗り、1966年頃から文化大革命で香港に大量の移民が押し寄せてきたこともあり、不動産需要が急騰して会社は一気に成長した。その勢いからこの3人には「三劍侠」というニックネームが付けられるほどだった。1972年になると新鴻基企業は組織改編を行い現在の「新鴻基地産」となり、その後、上場も果たす。

 上場で多額の富を手に入れた李氏は独立する事を決心。手元の資金で恒基兆業地産を1976年に設立した。中環(Cental)の国際金融中心(IFC)、將軍澳(Tseung Kwan O)の新都城(Metro City Plaza)、北角(North Point)のAIA Towerなど多くの不動産物件の権益を所有する。

 他の傘下企業では、香港小輪(集團)(Hong Kong Ferry(Holdings))は、北角-觀塘(Kwun Tong)間のフェリーやビクトリアハーバーをクルーズする「洋紫荊維港遊(Harbour Cruise Bauhinia)」を運航する。美麗華酒店(Miramar Hotel and Investment)は、尖沙咀(Tsim Sha Tsui)にあるホテル「The Mira」やショッピングモールの「Mira Place」を運営するほか、美麗華旅遊(Miramar Travel)も経営。香港市民の生活に一番密着しているのは、香港中華煤氣(The Hong Kong and China Gas)だ。香港のガスインフラは同グループが支えている。

 李主席は経済誌「フォーブス」の2019年版の長者ランキングでは301億米ドル(3兆3,000億円)と長江和記実業の創業者で2018年に引退した李嘉誠さん(317億米ドル=3兆5,000億円)の28位に続く第29位。日本のトップはユニクロの柳井正の222億米ドル(2兆5,000億円)の41位を大きく上回る。

 李一家は1984年から中半山(Mid-Level)の麥當勞道36号にある、事実上、李一家のために作られていたマンション「恵苑(Eva Court)」の最上階のペントハウスに住んでいた。しかし、2010年に山頂(Peak)エリアの白加道35号に18億2,000万香港ドル(256億円)をかけて3つの家を建設し2018年から終の棲家(ついのすみか)として暮らしている。1平方フィート当たり6万8229香港ドルであることから、3つの家の広さは2万6674平方フィート、1棟当たり8890平方フィートという巨大な家であることが分かる。白加道は政務長官用の公邸、在アメリカ総領事館総領事の官邸も建っていることで知られている通りだ。

 李主席の次男の李家誠氏はモデル・女優だった徐子淇(Cathy Chui)と結婚。香港の芸能紙面を大いににぎわせた。キャシーは芸能界を事実上引退し2男2女を授かったが、必ずと言っていいほど李兆基が孫と一緒に笑顔で写る姿が見られた。

 4大デベロッパーは、怡和洋行(Jardine, Matheson and Company)、太古集団(Swire Group)といったイギリス資本が仕切っていた香港経済を1997年の中国返還前には立場を逆転させ、香港経済の主導権を取っていた。李主席を含めた創業者の特筆すべき経営能力として評価されるべきである。

 翌3月21日は新鴻基地産のトップの1人で2014年に贈賄で有罪判決を受けていた郭炳江(Thomas Kwok)前聯席主席が刑期を終えて出所。現時点では仕事に復帰する計画は未定とのことだが、逮捕後、長男に権限を委譲しており、この2日間で香港経済の世代交代が一気に進んだことを象徴する出来事となった。

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