食物及衞生局の陳肇始(Sophia Chan)局長は5月7日、記者会見を行い、海外から香港に入境する際の検疫措置の変更について説明した。日本からの香港への渡航では、2回のワクチン接種を行った香港居民に限り21日間の政府指定ホテルでの強制隔離を14日間に短縮し、7日間を自主健康管理期間とすることとなった。
香港は9日現在、累計感染者数が1万1,808人、死亡者は210人、回復者1万1,493人、新規感染者は1人となっている。ワクチン接種者は9日現在、1回目が105万5517人、2回目も終えた人は64万8877人。1回目のワクチン接種者は香港居民の約16%に当たる100万人を超え、2回目も60万に達して、人口の約10%が完了した。開始当初は接種率が上がらなかったため、「ワクチンバブル」という形で、ワクチン接種を前提とした防疫と経済対策を4月から打ち出している。
外国から香港に入境する際の政府指定ホテルでの21日間の強制隔離については、肉体的・精神的な負担が大きいことから短縮を求める声が多く上がっていた。世界で先進国を中心にワクチン接種が進んできたこともあり、3月29日の会見で、ワクチン接種を前提に緩和する計画だと発表していた。
今回の発表は、既に推進しているワクチンバブルと絡める形で隔離緩和を行い、5月12日零時から実施する。「極高風険(Extremely high-risk)地区」は、今後は「A1組(Group A1)」という名称にし、ブラジル、インド、ネパール、パキスタン、フィリピン、南アフリカの6カ国を指定した。入境対象者は香港居民のみ。搭乗するには、この地域以外に2時間以上滞在しておらず、72時間以内のPCR検査が陰性で、21日間の政府指定ホテルでの強制隔離についての予約確認書をチェックイン時に見せる。ホテルでの21日間の強制隔離期間中、3、7、12、19日目(計4回)にPCR検査を受け、その後、7日間の自主健康管理期間で26日目にもPCR検査を受けなければならない。
「甚高風険(Very high-risk)地区」は「A2 組(Group A2)」に名称変更し、アイルランドとイギリスにいる香港居民のみが入境可能。グループA1との違いは2時間以上の滞在の項目が除外されているだけで、飛行機への搭乗や隔離期間やPCR検査の回数などは全て同じ。
「高風険(High-risk)地区」は「B組(Group B)」となり、バングラディシュ、ベルギー、カナダ、エクアドル、エジプト、エチオピア、フランス、ドイツ、インドネシア、カザフスタン、ルーマニア、ロシア、スイス、トルコ、ウクライナ、アラブ首長国連邦、アメリカの17カ国に滞在している香港居民のみが対象。こちらはワクチン接種を終えた人と終えていない人で条件が変わる。
接種を終えていない人は72時間以内の陰性証明と21日間の政府指定ホテル予約の確認書が必要で、21日間の隔離を行い、期間中は4回のPCR検査を行う。一方、接種を終えた人は(定義は最後の接種を終えてから14日間が経過していること)、72時間以内の陰性証明、14日間の政府指定ホテルの予約確認書が必要。隔離期間は14日間に短縮されPCR検査は3、7、12日目の3回。隔離終了後7日間は自主健康管理期間で16日目と19日目にもPCR検査を行う。
「中風険(Medium-risk)地区」は「C組(Group C)」で、A1、A2、B、D組に該当しない国・地域を指す。多くの国がここに属し日本もC組となるが、香港居民のみ適用となる。ワクチン接種を終えていない人は21日間のホテル予約確認書が必要で、21日間の強制隔離と4回のPCR検査を行う。接種終了者は、14日間のホテル予約確認書が必須。隔離期間は14日間でその間に3回のPCR検査、隔離終了後は7日間の自主健康管理期間で16日目と19日目のPCR検査を行う。
「低風険(Low-risk)地区」は「D組(Group D)」に変更し、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポールの3カ国の香港居民が対象。ここには中国本土、マカオ、台湾も組み込まれ、香港居民のみならず非香港居民も対象となる。ただし、広東省とマカオに住む非香港居民が香港へ入境する際に強制検疫を免除する計画「来港易(Come2hk)」があることから、同スキーム開始までの暫定措置となりそうだ。
ワクチン接種を終えていない人は14日間のホテル予約確認書が必要。強制隔離は14日間でPCR検査は3回。その後、7日間の自主健康管理期間で16日目と19日目にもPCR検査を行う。ワクチン接種完了者は7日間のホテル予約確認書が必要。強制隔離期間は1週間で、3、5日目の2回のPCR検査となる。隔離終了後の7日間は自主健康管理期間で12日目にPCR検査を行う。
この措置はD組を除いては香港居民が対象で、もし日本在住日本人がワクチンを2回接種したとしても、その対象にはならない。日本と香港のビジネスや観光での渡航は、香港とシンガポールが「エア・トラベルバブル」から始めようと計画していることと同様に、トラベルバブルから解禁されると見られる。