在香港アメリカ商工会義所は5月12日、会員を対象に香港ビジネスについて調査したリポートを発表した。昨年6月30日から香港国家安全維持法(NSL)が施行されたが、香港からの移転について検討または計画していると答えたのは42%に上ることが明らかになった。
同商工会は1968年の創立。会員数は1300社を超え、アメリカ国外にある各商工会の中でもトップクラスの規模を誇る。ボーイング、シティバンク、フェイスブック、ディズニーランド、IBM、マイクロソフト、ファイザー、VISAなどのほか、キャセイパシフィック航空、香港中文大学、HSBC、蘭桂坊集団、モエヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)、ネスレ、郵船ロジスティクス、JTの関連会社であるJT Internationalなど、アメリカのみならず香港や日系企業も会員となっている。
今回のテーマは「Should I Stay or Should I Go?(とどまるべきか去るべきか)」。国安法のみならず、アメリカと中国の経済摩擦を含めた新冷戦という環境下での香港ビジネスについての調査で、5月5日~9日、会員企業の24%に当たる325社から回答を得た。
「香港に居住する長さ」については、1年未満=4%、1~5年=27%、6~10年=22%、11~19年=23%、20年以上=24%と、まんべんなく分布しているのが特徴。
「香港を離れることを検討または計画をしているのか?」という質問に対して58%が「いいえ」とし、42%が「はい」と回答した。昨年8月の調査で「個人的に香港を離れることを考えているか?」という質問に46.75%が「いいえ」、44.16%が「中長期的に離れることを考えている」と答えており、大局的に見れば数字はあまり変化していない。つまり、依然として迷っている様子が明らかになった。
今回、「はい」と回答した理由を聞くと(複数回答可)、「国安法が不安」=62.31%、「新型コロナウイルスによる渡航制限や家族に会えないことが状況を難しくしている」=49.23%、「香港の未来の競争力に悲観的」=41.54%などとなった。
「いつ離れるのか」という問いには、「すぐ」=3%、「夏が終わる前」=10%、「今年の終わり」=15%、「次の3~5年」=48%、「仕事と家族次第ではすぐ」と回答した人も24%いた。
一方、「いいえ」と答えた58%の人は、居続ける理由として「生活の質が良い」=76.76%、「ビジネス環境が素晴らしい」=55.14%、「香港が未来の生活と仕事を提供してくれると信じている」=49.73%がトップ3の回答となり、「中国市場への近さ」と回答した人も47.57%と約半数いた。
最後は「もし、今または将来、香港を離れた場合、私は恐らく…」という質問。「母国に帰る」=39%、「アジアの以外の新しい国に移る」=18%、「アジア地域にとどまる」=43%と、仮に香港を出たとしてもアジア地域にとどまるだろうと考えている人が、母国に戻ると考えるよりやや多いことも明らかとなった。