見る・遊ぶ

香港藝術館でシュルレアリスムの大規模展 パリの「ポンピドゥ・センター」と共催

ダリの初期作品『ウィリアム・テル』(左)など展示

ダリの初期作品『ウィリアム・テル』(左)など展示

  • 17

  •  

 尖沙咀にある香港藝術館(HKMoA)(10 Salisbury Road, Tsim Sha Tsui, Kowloon)で現在、「神話」を切り口に「シュルレアリスム」と呼ばれる芸術運動・思想を紹介する展示「Mythologies: Surrealism and Beyond - Masterpieces from Centre Pompidou」を開催されている。フランス・パリの国立近代美術館「ポンピドゥ・センター」と共催。

[広告]

 同展示は毎年5月、フランスの文化や芸術を多彩なプログラムで香港に紹介する恒例の「法国五月藝術(Le French May)」の一部として開催し、縮小規模で開催されている今年のル・フレンチ・メイのプログラムの中で目玉の一つとなっている大型プログラムに位置付けられている。シュルレアリスム研究の世界的な権威で、ポンピドゥ・センターの副館長を務めるディディエ・オッタンジェさんがキュレーションを務める。

 1924年にフランスの詩人アンドレ・ブルトンが発表した「シュルレアリスム宣言」によって創始された「シュルレアリスム」は、物質文明の進展によって人間性の疎外が進んでいると感じたシュルレアリストたちが超現実や無意識の世界の探求を通じて、生と社会の変革を目指した20世紀最大の芸術運動。コラージュ、自動記述、オブジェ、夢、神話などさまざまな手法や概念を導入し、文学や美術にとどまらず、映画や広告など広く20世紀の文化全般に深く大きな影響をもたらしている。

 今回の展示では、シュルレアリスムの中心となった都市、パリのポンピドゥ・センターの膨大なコレクションの中からシュルレアリスムの重要なアーティストであるジョルジョ・デ・キリコ、サルバドール・ダリ、ルネ・マグリット、ジョアン・ミロ、マックス・エルンスト、マン・レイ、ジャクソン・ポロックなどの作品と資料100点以上を、神話というシュルレアリスムを貫くテーマを切り口に紹介する。

 8つのセクションで構成し、「Paris by Night」と題された展示の始まりはこの芸術運動の主な舞台となったパリの街を写真家ブラッシャイの作品を通じて紹介。続く「黄金時代」は古代ギリシャの詩人ヘシオドスが語った神話の一つで、 神々と人間が共に暮らし、幸福にあふれ調和が取れていた時代とされている。このセクションではシュルレアリスム運動の旗手ブルトンがネイティブ・アメリカンのホピ族を訪問した際に、黄金時代を再発見したとして思想家シャルル・フーリエへのオマージュとして書いた「Ode to Charles Fourier」や、展示のハイライトでもあるダリの初期の絵画作品「ウィリアム・テル」などを展示している。「キメラ」「ミノタウルス」では、これら神話的動物がシュルレアリストに与えたインスピレーションと実際にモチーフとなった作品を展示。

 「アセファル」では思想家のジョルジュ・バタイユが作り上げた、頭を持たない存在で、彼が創始した秘密結社の名前であり、機関紙の名前でもある「アセファル」に着目し、バタイユが原始的社会における神話の重要性を明らかにした民俗学的な研究内容を掲載した雑誌「ドキュマン」を紹介するほか、バタイユの思想を芸術で表現したアーティストの作品を展示している。「First Papers of Surrealism: the Surrealists in Exile」では、戦争により多くのシュルレアリストがアメリカへの亡命と、そこから起こったアメリカのアーティストと作品や、「The Grand Transparent (Surrealism in 1947)」では亡命先のアメリカからパリに戻ったブルトンが1947年に開催した展示にちなみ運動の後期の作品を紹介するなどして、神話の重要性を裏付ける内容となっている。展示の最後「In Search of a Surrealist Perspective: Back to Hong Kong」では香港のアーティストがシュルレアリスムへの反応を作品で表現している。

 開館時間は10時~18時(土曜・日曜・祝日は19時まで)。火曜休館。入館料は、大人=30香港ドル、子ども=15香港ドル。9月15日まで。

エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース