日本国内でも大ヒットとなった映画「竜とそばかすの姫(龍與雀斑公主)」が10月28日から香港でも公開される。公開に先立ち22日、K11Museaの映画館でプレミア試写会が開催された。
試写会の会場では高知グッズや舞台のモデルとなった県内各所を説明する資料も
日本では7月16日の公開後、3週連続で興行収入1位を記録し、公開1カ月で50億円以上の興行収入を記録している。第74回カンヌ国際映画祭オフィシャル・セレクション「カンヌ・プルミエール」部門に日本映画として唯一選出され、ワールドプレミアには、約1000人の観客が来場し、上映後14分間に及ぶスタンディングオベーションに沸いたという。
香港での公開に先立ち、細田監督は「ベルは現代のインターネットを舞台にした新しい世界についての作品。もう一つの現実があるんだということを世界で初めて表明した作品かもしれない。これから僕らは現実とインターネットの両方を生きるような時代に入ってきた。そんな中、若い人を応援する作品になったと思う。ぜひ香港の皆さんにも楽しんでもらいたい」とコメントを寄せた。
映画は全世界で50億人以上が集う仮想世界「U」を舞台に、17歳の女子高生すずが、歌姫「ベル」というアバターとして注目を浴びながら、現実世界での悲劇を乗り越え成長を遂げる長編アニメーション。
香港でも人気の細田監督は、かつて「サマーウォーズ」で描いたインターネット世界を舞台に、「時をかける少女」以来となる10代の女子高校生をヒロインに歌と映像で迫る作品で、母親の死により心に大きな傷を抱えた主人公が、もう一つの現実に設定されたインターネット上の仮想世界で大切な存在を見つけ、悩み葛藤しながらも懸命に未来へ歩いていこうとする勇気と希望の物語に仕上げている。
現実世界と仮想世界、2つの世界を2Dと3Dで描いた同作品。スタッフ・キャストチームには、役者、音楽、デザイン、アニメーション、CGなど各ジャンルの才能が集結し、試写会当日は、言葉は違っても映像の美しさと歌に引き込まれていた香港人も多く、時には笑い声も鳴り響いた。
会場では、舞台のモデルとなった高知県の景勝地や街並みを解説する資料なども配り、熱心に読む姿も。通学のシーンとして、何度も登場する鏡川(高知市)、主人公すずの自宅がある浅尾(あそお)沈下橋(越知町)は、周囲の山と対岸の鎌井田集落とのコントラストが特徴的だ。ほかにも安居(やすい)渓谷の幻想的な青が見られる「仁淀ブルー」、その仁淀ブルーの聖地「にこ淵」など、高知市内から四万十・足摺エリア、室戸エリアまで18以上の景色が登場する。景観だけでなく、何気ない会話からカツオのたたきや高知ナスなどの食の描写も差し込まれている。高知県は今後、香港でも同作品のモデルとなった各エリアを香港の旅行会社やメディアに紹介しながら、コロナ終息後、積極的に高知県への誘客を図っていきたいとする。
香港内映画館37館で上映。九龍湾駅のMCL德福戲院ではMX4Dでも上映。香港公開後、マカオでも公開予定。