在香港日本国総領事館、ジェトロ香港事務所、日本商工会議所が1月25日、四半期ごとに実施している「香港を取り巻くビジネス環境に係るアンケート調査」の結果を発表した。
アンケート調査は2019年9月に始めて以来9回目。調査は1月3日~7日にインターネットを通じて行い、同会議所の正会員(508社)と香港日本料理店協会会員(85社)、香港和僑会会員(27社)の計620社を対象に実施し、232社から有効回答を得た。(その他団体に所属していない19社も含めると有効回答数は251社)。
直近の2021年第4四半期(10月~12月)についても、これまで同様、政府の水際対策措置の継続による国境を越えた往来の制限によって営業活動に大きな支障が続いている。現在は第5波に見舞われている香港だが、昨年末までは大きな感染拡大はなく、制限がある中でも、飲食店などでも過去最高益をたたき出した店もあるほど、香港内だけを見れば苦しい中でも堅調に推移する業態も見られた。
一方、製造業など中国本土との関係が強い業種になればなるほど、相反する反応が浮かび上がってくる。21 年 7~12 月期の DI 値は、21 年 4 月~6 月期と比べ 4.3 ポイント低下し 19.1%となった。22 年 1~6 月期の DI 値(見込み値)は 21 年 7~12 月期より 15.4 ポイント低下し 3.7 となり、上半期の見通では降下傾向が鮮明だ。理由としては、調達難、物流の問題などで、中国の景気動向にひきづられたとみられる。
21年7月~12月の業績が「改善」と回答した企業はわずかに上昇し38.2%。「悪化」「大幅悪化」と回答した企業の割合も上昇し、19.1%となった。改善理由は、香港市場での売り上げ増加や、中国以外への輸出拡大による売り上げ増加を理由に挙げる企業が多い。一方、業績悪化の要因としては、調達コストの上昇を挙げた企業が23.9%(11社)となった。ほかにも「販売価格への不十分な転嫁」が19.6%(9社)、「中国本土への輸出低迷による売り上げ減少」「香港市場での売り上げ減少」も共に23.8%、業種としては 電気・電子機器、アパレル、製造装置事業者、素材系、金型、建設などが該当する。
何が業績に影響を与えたかを問う影響要因としては、全体の68.1%が「新型コロナウイルス」を挙げたが、それと共に「半導体や原材料の不足」「サプライチェーンや海上輸送の乱れ」などを挙げる企業もある。
香港国家安全維持法への懸念と影響については、回答企業のうち51%が「大いに懸念している」「懸念している」と回答したものの、実際にマイナスの影響が生じているのは12.5%の企業に限られているようだ。国安法の懸念理由は以前より「情報に制限がかかる恐れがあるから」が1位の理由だったが、「人材が流出し、優秀な人材確保が困難になる恐れがあるから」と答えた人も61.7%いた点が、以前と異なる理由として挙げられる。
業務遂行で困っている点として、自由記述で回答した企業のうち約 64%(89社)が、「渡航規制等による営業活動の制限」など、出入境の規制を挙げたことは以前と変化がないものの、人材の流出、人件費の高騰など、人に絡むものを17%(24社)が挙げたことが特徴的。特に質の問題などに言及する懸念は他の調査などでも出始めているという。
22年1月~6月の上半期の見通しについては、改善が悪化をやや上回り、そのほかはほぼ横ばいと回答する企業が約6割となっている。特徴としては、精密、電子機器など、中国に工場を構える企業では改善傾向が想定されるものの、中国向けの素材系商社などは売上減少が予想される。業態や業種によって中国のビジネスも改善と悪化の両パターンを予測している企業が多い。
香港にいながら、中国全体、GBA、アセアン全体をみる企業があり、依然としてリージョナルヘッドオフィスとして活用している企業も依然として多い。今後各社が香港拠点をどのように活用するのかついては、規模を拡大すると考えているところが3ポイント増。北部開発、香港市場の拡大、GBAへの期待によるものだ。
ジェトロ、領事館、商工会議所は、今後も、隔離措置の撤廃等、中国本土や日本との出入境緩和に関する両政府への働きかけをしていきたいという。