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香港の菓子小売りチェーン「優の良品」、全店閉店 新型コロナが直撃

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 香港の有名な菓子小売りチェーン「優の良品(AJI ICHIBAN)」全店が6月5日の営業を最後に閉店した。同店は中国本土の観光客に依存したビジネスモデルで、新型コロナウイルスで観光客がいなくなったことが直撃した。

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 事の始まりはネットユーザーの一人が6月6日、「優の良品」の店を訪れたところ、シャッターの向こうの棚が全て無くなっており、その様子を投稿したことだった。同社は閉店に関して一切発表していなかったことで新たな憶測を呼んだ。翌7日、同社スポークスマンは6日現在運営している全ての店が閉店したことを認めた。理由は新型コロナウイルスの拡大により香港への観光客が来なくなり、財政が悪化したためとしている。ただし、経済状況などが改善すれば営業再開もあり得ると述べている。

 「優の良品」は1993年、黎ファミリーによる香港企業が創業。日本的な店名をつけた理由として、当時の日本はバブル経済が崩壊していたものの、まだその名残りが残っており、香港における日本企業の存在感があった時代があったことを表している。1992年には「無印良品」を運営する良品計画が香港の大手百貨店「永安百貨」を経営する永安と手を組んで香港に進出した。優の良品という名前はそこからヒントを得たものといわれている。中国語の「之」ではなく、ひらがなの「の」としたのも、当時は日本の音楽も多数カバーされるなど、日本のものがかっこいい時代だったことが背景にあるという。意図的に「の」を使った影響は大きく、その後、「の」を使った企業、商品が香港でいくつも登場したほどだった。

 商品は、日本の商品を輸入販売するのではなく、中国で製造したものが中心で、クッキー、キャンデー、クラッカー、ドライマンゴー、ビーフジャーキーなどを扱っていた。キャンデーなどの量り売りも特徴で、一時期は香港で100店近い支店を構え、フィリピン、アメリカ、カナダななどにも支店網を構えていた。

 主な顧客が香港市民から中国本土の観光客に変わったのは2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の影響だ。香港経済を立て直すため中国人の香港への渡航条件を大幅に緩和したことで、一気に中国人が来港し爆買いを始めた。優の良品は量り売りではなく土産として買われやすい箱やパッケージでの販売に切り替え、香港人の利用が遠ざかる要因にもなった。

 その後、支店の閉鎖が相次ぎ、最後は銅鑼湾(Causeway Bay)の利園山道(Lee Garden Road)など数店舗にまで縮小し、従業員も20人ほどになっていた。

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