青森県の三村申吾知事が2月4日~7日の4日間、香港に滞在し、香港の関係者と積極的な対話を行った。2022年度は検疫措置が講じられる厳しい状況の中訪れた8月の訪問に続き2回目の来港で、前回フードエキスポ内で行われた「香港との経済交流の促進に向けた標記MOU締結式」で誓った香港とのより深い結びつきを維持するため、観光、貿易、さらには文化・アートへのアプローチを図った。
夏の訪問以降、実際の目に見える成果も出ているという。8月に隔離措置や災害など厳しい状況の中、コロナ後を見据えて直接交渉したことで、観光分野では、団体旅行も日本を扱う大手旅行会社で毎月それぞれ20~40本の青森を含む旅行商品が造成され、昨年10月・11月については東北6県の中で香港人が最も多く訪れた場所が「青森県」という結果につながっている。メディアなども活用した日頃の発信活動により、以前、香港には隔離措置があった中で緩和した個人旅行の解禁のニュースとともに100室を越える申し込みが殺到した県内の宿泊施設もあるという。
もともと県産品を多く扱い香港内に5店舗を構える「天丼てんや」では、年に1度の展開で「青森祭の特盛」のメニュー名でセットメニューを提供する。同店にも知事は訪れ、香港市民やメディアに直接アプローチした。特別メニューは陸奥湾で採れたホタテは刺し身状のまま揚げ、イカをすり身にしたイカボール、ブラックタイガーエビ、タマネギとアサリの練り物、のりを添えたボリューム感のある青森食材を使った丼。タコと海藻のサラダや、タコの天ぷら、リンゴの天ぷらとアイスクリームなども用意した。期間限定で販売する。
2月3日に発表された「2022年の農林水産物・食品の輸出実績」の中でも大きく数字を伸ばしたリンゴは、財務省の貿易統計によると、昨年9月~12月までの4カ月間で137億7,800万円余りを記録。これまでで最も早いペースで販売実績が推移している。そのうち香港市場は4524トンを記録した。香港市場では贈答用に加え、日常食として日本のリンゴが親しまれている。AEON康怡花園やCity’superの店頭では、三村知事が紙芝居などで会場を盛り上げ、イベントに続き店頭でも試食を行った。
アジア初の現代ビジュアル・カルチャー美術館「M+」では、鄭道煉(Doryun Chong)副館長、キュレーターの横山いくこさんから直接説明を受けた。青森には県立美術館をはじめ、十和田市現代美術館、最近では、弘前れんが倉庫美術館など多くのアート施設がある。香港貿易発展局(HKTDC)からも「今の香港を象徴する中でもこの「M+をぜひ見てほしい」というアドバイスを受けたことから、今回の公式訪問につながり、青森県がコロナ後初のオフィシャル訪問団となった。
キュレーターの横山さんが「20世紀のアートや建築は、作品や作者それぞれに焦点を当ててきたが、これからのアートは接点、視点、社会背景などを作品同士でつなげていくもの。国ごとの代表作を集めていくのではなく、そこにどんな横断的なネットワークや影響があったのかをコレクションしてきた」という説明に知事は大きくうなずき、HKTDCのマーガレットフォン総裁から「香港の位置、意味。まずM+に行ってくださいと言われたことが理解できた。大きなヒントを得た」と話した。
三村知事は、20年に及ぶ県政トップを6月28日の任期満了をもって退く。これまで香港でサポートしてくれた友人たちに、「自分が去っても次のトップや青森県の担当者たちにも同じように温かく接して応援してほしい」と話しながら、「直接会ってこそ分かりあえるものがある」と言葉を残し、来年度以降はさらに香港との結びつきを強くしていくことを、交代するトップ、県職員、県民にも伝えようという姿勢で今回の香港訪問を締めくくった。