日本から輸入した魚や貝類を扱う鮮魚専門店「Uoya ZEN」(108 Wellington St., Central, Hong Kong TEL 2423 2008)が2月23日、香港の中環のエスカレーター沿いにオープンした。
もともと日本から香港への航空機は便数も多いことから、朝日本を出た魚は夕方には香港のすし店に届き、当日のディナー時間帯に提供できることは知られてきたが、これが一般消費者向けの小売りでも展開されることになった。すし店に納品する時間帯のすぐ後に同店に魚が届けられ、その日のうちにさばいて店頭に並べる。香港で本マグロを中心に水産物を扱う食品卸「ゼンフーズグループ」が展開する小売業態となる。香港では高級すし店であらゆる魚や貝を提供できる環境と物流などが整備されているが、「高級店に限らず一般人にも気軽にいろいろな魚を知ってほしい」とオープンにこぎ着けた。店内は鮮魚、魚の切り身、刺身、ネギトロ丼やすしのセットなど、さまざまな形態で販売する。
同店に常駐する日高勝利さんは「どんな種類の魚でもさばくことができる」という。日高さんは鹿児島県屋久島の出身で、小中高時代は鹿児島市内に住んでいたが、当時も父親と釣りなどによく出かけることもある少年時代を過ごしたことが現在の仕事にもつながっている。日本国内で魚関係の仕事に就いた後、香港へ来た。同店は客の希望や注文を豊洲に伝え、仕入れるというサービスも展開する予定だが、そこに重要なことは「信用」。日高さんが魚を直接目利きする状況にない中、「良い魚を提供するために必要なのは信頼関係」。豊洲で働いたこともある日高さんだからこそ、この「信用」を武器に香港で注文を受けることができるのだという。
同店の特徴の一つは、マグロ、ウニ、サバ、アジ、キンメダイ、アカムツ、タチウオなど香港で好まれる魚に加え、ウニをワゴン1つに並べて多くの種類から選べるようにしていること。産地表示だけでなく、競りの時につく番号や札も一つの要素で、日本に詳しい香港人の中にはこの仕組みを理解して若い番号の札を欲しがる人もいるが、番号は単に大きさや色だけでないことも伝えていきたいという。業者によっても、ウニを殻からむくスピードやむき方、渇きの状態や加工の仕方なども違うため、こうしたステップに興味ある香港人が食材についての理解をより深められる店になりそうだ。
香港にも多くのクルマエビがあるがそのほとんどは中国産で、街市などで購入できるもの。同店では沖縄産や熊本産のクルマエビを1尾88香港ドルから販売する。クルマエビは繊細で管理も大変なことからコストも高く、扱わないケースが多いなか、同社は「あえてそこに挑戦する」という。「すし屋などから急きょ、日本のクルマエビの注文が入った場合でも対応できるようにしたい」とも。
珍しい魚も並べ、香港に紹介したいという。漁師の間でも「おいしい」とされる珍しい魚の中から、深海魚であるアブラボウズや見た目のグロテスクさと比較して中身は白身であるサメガレイなど、刺し身でも、焼いても、煮ても味わえる魚をはじめ、琉球スギやミカンダイなど、季節ごとに地域を限定する珍しい魚も扱っていくという。ほかにも新鮮なものの入荷が難しいニシンなどが並ぶ日もあり、「すし屋でネタとして切り身を見る魚が実際はどんな大きさ、色をしている魚なのか知ってほしい」と日高さんは話す。魚の種類や名前、漁場などが分かるように、魚の種類ごとの解説カードも25種類用意した。
「ゆくゆくはマグロも50キロ~60キロのものを解体とセットで販売し、パーティー需要なども多い香港で新サービスも展開したい」と意気込む。
営業時間は11時~23時。日曜~21時。