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香港政府、東京ほか10都県からの水産物輸入禁止を表明 処理水放出の場合

日本政府と香港政府関係者の面談も

日本政府と香港政府関係者の面談も

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 香港政府は7月12日、東京電力福島第一原子力発電所に関連する多核種除去設備(ALPS)処理水が海洋放出された場合、東京、福島、千葉、栃木、茨城、群馬、宮城、新潟、長野、埼玉の10都県からの水産物の輸入を禁止すると発表した。日本の水産品が多く流通している香港だけに大きな影響が出ることは避けられない。

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 香港は農林水産物の輸出で2020年までは16年連続で1位を記録するなど、日本の水産関係者にとって大きな輸出先となってきた。農林水産省が2023年2月に発表した「2022年の農林水産物・食品の輸出実績」によると、香港は約2,086億円で、水産品は755億円だった。

 東日本大震災以降、香港はいくつかの県の輸入について既に制限を課し、徐々に緩和もしてきた。依然として福島県の野菜や水産物は禁止、関東は茨城・栃木・群馬・千葉産の水産物、食肉、家禽(かきん)卵は基準値を下回っているという放射性物質検査証明が必要となっている。処理水が放出されれば、これらの県からの水産物は輸入禁止となる。今回の措置により、東京・宮城・新潟・長野・埼玉が加わり、計10都県となった。この10都県は中国政府が2018年から実施している輸入規制と同じ。つまり、香港政府は中央政府と歩調を合わせたことになる。

 影響は、香港市民の食卓からすし店を中心としたレストランまで幅広く影響を受けそうだが、10都県のうち、栃木・群馬・長野・埼玉は海がないため、、海塩、未加工または加工された海藻などは含まれるものの、大きな影響はないとみられる。北海道、関西、四国、九州など全国に適用範囲が広がらなかったことで関係各所も対策に乗り出している。

 対象となる品目は、生もの、冷凍、冷蔵、乾燥物、保存された水産物、海塩、生または加工された海藻。水産品以外では、福島産の野菜、果物、牛乳、乳飲料、粉乳は既に輸入禁止となっていたが、その政策を維持するほか、茨城・栃木・群馬・千葉産の野菜、果物、牛乳、乳飲料、粉乳は、放射性物質検査証明や輸出事業者証明が必要とする政策も継続する。

 判断基準については、商品やパッキングリストなどにて表示された製造地や原産地となる。例えば、カニの缶詰が該当県の工場にて加工され、商品には製造地の「東京都」のみ表示された場合、かに肉は北海道産だとしても、香港政府から輸入を禁止される。この場合、 原料原産地表示が必要となり、原材料の原産地証明書も必要となる。

 在香港日本国総領事館の岡田健一総領事は新民党の葉劉淑儀(Regina Ip)主席に7 月11日に面会したほか、翌12日には岡田総領事と、その関係者が陳國基(Eric Chan)政務長官や環境及生態局の謝展寰局長と面談したが、中国本土と歩調を合わせた禁輸措置を撤回させるには至らなかった。

 香港政府は「日本側と緊密なコミュニケーションを維持する」とし、「放出が始まった後も一定期間監視し、より多くのデータを取得することで、関連措置を随時見直す予定」としている。

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