香港で復活を遂げた「リージェント香港」が8月、客室の提供を始めた。同ホテルはインターコンチネンタル香港があった場所に開業したが、もともとは1980年~2001年、「リージェント香港(The Regent Hong Kong/香港麗晶酒店)」として多くの観光客に愛されてきた正統派ホテル。これまでレストランは営業していながら宿泊はできなかったが、いよいよホテルの稼働が本格的に整った。
ロビーとチェックインカウンターも落ち着いたミニマルなデザインに
デザインを担当したのは、香港で生まれ、アメリカ、ギリシャ、イタリアで30年以上を過ごしてきた建築家のチー・ウィン・ロー(盧志榮)さん。建築、彫刻、インテリア、家具デザインなど、イタリアのコンテンポラリーデザインの分野で高い評価を受けている。ホテルプロジェクトとしてはこのリージェント香港が初だという。
ロビーでは、床から天井までをシャンデリアに見立てた垂直に並んだ16枚のガラスレンガが、天井と床から光を取り入れる。凹凸を組み合わせてガラスを組み合わせているため、反射効果を利用して優しい光を放つ。中国の伝統的なガラス工芸「琉璃(るり)」にインスパイアされたものだという。
チェックインカウンターには長さ15メートルのデジタルアートLEDスクリーンを設け、「Nourish(育み)」の精神を表現したという映像を映し出す。香港のニューメディア・アーティストHung Keung(洪強)さんによる映画のようなアートワークは「ムードとリズムを作り出し、リージェント香港の再生を表現」した。
できる限り凹凸をなくし、「直線上にシンプルにまとめることで心地よさを作り出す」設計が特徴。色味は、ベージュ、トープ、黄褐色などに薄いミントグリーンを差し色にしている。「継ぎ目がない」のも大きな特徴で、チェックインカウンターや通路などもなるべく凹凸をなくし、例えば客室の番号も内照することで木の壁に数字を映し出すなど、どこも平面が続いている設計は客室も同様である。
照明なども自然なリフレクションで場を温かくするようにし、最大限に広さを感じさせるために、戸棚も床に置かずに浮かんでいるように取り付ける。「単に宿泊する場所というよりも、にぎやかな大都会の中で安らぎと落ち着き、バランスの取れた感覚を提供するものでありたいと思った」とローさんは話す。
ゲストルームは、「パーソナル・ヘイブン(私的な安らぎの場)」を作ることに重きを置いたという。ローさんのデザイン哲学の中心は、各ゲストにとって「熟考と静寂を呼び起こすよう、あらゆる引き算をし、考え抜いて作った」というもの。「額縁のない景色は、目のレンズを通していない景色に過ぎない」とし、窓を額縁に見立てたり、ビクトリアハーバーの眺望がメッシュ模様の鏡張りのスライディング・ドアに写り込むようにしたりするなど、工夫を凝らす。
開放的で広々としたレイアウトに、柔らかな薄い茶色トーンのカーペット、「調和の取れた」家具、模様の入った鏡、アーチ型の天井、天井から響く「わずかなエコー」を組み合わせた。家に帰ってきたときにも「最初に全身きれいにしたいと思うだろうという発想から、洗面所、バス、シャワー、トイレを大きなルームの一つと捉えている」と言い、シャワールームにも仕切りはあるものの扉などは設けていない。
幾何学の2つの基本要素、「完璧さの追求を表す」円形と「中国の伝統で天地を表す」四角形を部屋の各所にもちりばめる。鏡、波型の天井、木、革、布、ガラス、石などもこだわりを見せる。あえてビジネス用の机などは置かず、窓の手前に置かれたデイベッドでくつろげるように設計にした。肘掛け椅子には回転機構が備わり、座ったまま座席の向きを変えることも可能だ。
一部のハーバービュールームでは、スライドドアを開けると丸い独立型バスタブからハーバーを眺めることができる。ネロアフリカ花こう岩を使ったユニークなバスタブとシャワーを備えた客室もある。
グランドオープンは11月を予定。