中国政府は新型コロナウイルス対策の防疫対策の一環として採用し中国本土と香港の往来に「健康申報(The health declaration code )」と呼ばれる健康申告書の提出を義務付けてきたが、11月1日、これが撤廃された。併せて、中国本土とマカオの車両が一部の条件付で来年から香港を走ることを認める方針を示した。入境の条件を下げることで香港と中国の往来を促進させたい考え。
香港は中国の一部ではあるが、1国2制度を採用していることから、香港と中国の往来する場合、完全に自由とは言えない。コロナ禍が広がった際、香港はいち早くボーダーを閉じた。その後、中国は香港以上の厳しい防疫対策を取ったこともあったことから、香港と中国での往来は容易ではなかった。往来再開後も一定の条件が付けられていたが、徐々に規制を緩和。最後に残っていたのが「黒碼(Black Code)」と呼ばれる健康申告書の提出だった。健康申告書は、専用ページにアクセスし、必要事項を記入し、QRコードを取得。それを税関で提示する必要があった。このシステムがようやく撤廃される。
これと時を合わせ、香港政府運輸及物流局の林世雄局長は11月2日、広東省の車両が自由に香港内に乗り入れることを可能とする「●車南下」について来年始めたい意向を示した。2段階で実施するが、具体的な日程は今後発表するという。
自動車の往来については、これまで広東省と香港の両方のナンバープレートを取得しなければならなかったが、今年7月1日から香港の車両が広東省に行く場合は、通行許可証を取得すれば自由に運転することが認められている。これは「港車北上」というスキーム名で、広東省に1回入ると、最大30日間(年間で180日)の滞在が認められる。全ての香港車両が中国を走るのは混乱するため抽選制になっており、1回目の抽選では7700人が許可証を得た。
つまり、「●車南下」はその逆となるスキームで、第1段階は、許可を受けた広東省の住民の車両が、香港国際空港の駐車場内に特別に設置した制限区域まで乗り入れることを認めるもの。そこからは専用のバスなどで空港に移動し、外国に飛び立つ。
第2段階では、許可を受けた広東省の車両が自由に香港に入ることができる。ただし、香港は中国本土と違い、土地が狭いうえに道路も狭い。その状況下で広東省の車両が入ってきた場合、香港の交通への悪影響が懸念される。そこで香港政府は、車両が進入できるのは大嶼山(Lantau Island)や北部都会区、マカオ市民であれば港珠澳大橋(HZMB)の中間部にある建物までの通行を認める案が出ている。
導入開始日などの詳細は今後発表するとしているが、現時点で香港政府は、香港中心部までの乗り入れには慎重な姿勢。これにより香港と中国本土の往来が促進されると見られる。