2024年香港経済新聞の上半期PV(ページビュー)ランキング1位に輝いたのは、香港大学によるアルプス処理水調査についてを伝える記事だった。
香港政府はアルプス処理水が放出されたことを受け、昨年8月24日から福島、宮城、東京、千葉、埼玉、栃木、茨城、群馬、新潟、長野の10都県で収穫、製造、加工などされた水産物の輸入禁止を継続している。日本の農林水産物の最大の輸出先ともいえる香港での規制は大きな影響を与えているものの、直近の日本政府観光局(JNTO)が6月19日発表した5月の訪日香港人数(推計値)でも、前年同月比40.9%増の延べ21万7500人で、5月としての過去最高を更新するなど、依然として日本への人気は揺るがない。
ランキングは、今年1月1日から6月30日までに配信したヘッドラインニュースのPVを集計したもの。上位10位のランキングは以下の通り(カッコ内は掲載日)。
1.香港の大学がアルプス処理水に関する調査 日本への信頼高く、訪日減らさない (2/25)
2.香港のワゴン式飲茶「蓮香居」が改名 年明けから「六安居」に (1/4)
3.香港・旧正月のナイトパレード、5年ぶりに復活 アバンギャルディも来港 (1/25)
4.香港政府、2025年公休日発表 旧正月に期待、イースターは週末重なる (5/7)
5.中国国産旅客機「C919」、香港でも商用飛行開始 上海へチャーター便 (5/27)
6.香港で大規模「ドラえもん」特別展、開催へ 世界初のドローンショーも (5/26)
7.香港で「天皇誕生日祝賀」レセプション 日本の各自治体も魅力を発信 (2/6)
8.「ミシュランガイド香港・マカオ」発表 新たに香港5店舗星獲得、日本勢も (3/18)
9.マーベルの人気ヒーローが香港ディズニーに集結 期間限定で (4/27)
10.香港に日本アニメ体験の大型施設「ANIMA TOKYO」 レストランも (5/5)
2位には香港の飲茶店の店の記事がランクインした。12位にランクインをしたもともとの姉妹店である飲茶の老舗「蓮香楼(Lin Heung Tea House)」とともに、激動の歴史を歩みつつも香港で数少なくなったワゴン式飲茶の提供で昔ながらの風景を残している。
3位、6位、10位には香港でも日本のコンテンツの強さを示す記事がランクイン。香港・旧正月のナイトパレード、5年ぶりに復活したがトリを飾る最大のハイライトは「アバンギャルディ」で日本が最も大きな扱いとされていたことからも、日本のエンターテインメントトへの強い興味がうかがえる。今年になってからもAdo、中島美嘉、YOASOBI、新しい学校のリーダーズ、RADWIMPS、MISIA、Perfume、乃木坂46、宇多田ヒカルと多くのライブが続いている。今後7月から本格的に開催される「ドラえもん」大規模展のスケールも街中、ドローン、電車ジャックなど、香港全土を巻き込んだ企画が目白押しだ。
4位には2025年の公休日についての「休日の攻略法」がランクインした。香港では、多くの市民がSNS上で情報を拡散し合う注目の「香港公休日」だが、日本からもアクセスが多く、香港から日本へのインバウンドや香港とのビジネスを手がける人たちにとって「公休日」を知りたいというニーズもうかがえる。エクスペディアが6月26日に発表した調査では、2023年度における「有給休暇の国際比較調査」で、香港の有給休暇取得率は108%、1位に輝いた。
5位には、中国国産旅客機「C919」が、香港でも商用飛行開始をしたニュースがランクイン。最大航続距離が5500キロであることから、広大な国土を持ち、14億人の抱える巨大市場の中国国内の需要だけで十分とも言われ、アジアや東南アジア路線であれば当該航空当局次第では商業飛行の可能性はあるとされる。
9位には、日本からの観光客も多い香港ディズニーがランクイン。香港ディズニーは6月25日、2024年9月期は10年ぶりに最終損益が黒字に転換するとの見通しを明らかにした。日本人にも人気の「アナと雪の女王」をテーマにした新エリアがけん引に大きく影響した。
香港はアルプス処理水関連の問題がありながらも、依然として世界最大の日本産農林水産物・食品の輸出市場として健在し、飲食業界を中心に日本ブランドの出店は相次いでいる。一方、在香港の日系企業の中には、本社が香港の実情を悲観的に認識しているパーセプションギャップに悩む企業も多い。
7月1日、香港は返還から27年を迎えた。香港からの移住の波はいったん収まった感もあるが、香港在住日本人の数も減り、民主化デモ・コロナ以降日本人観光客の足は戻っていない。香港を離れた人がいる分だけ、新たに香港に移住をしてくる人たちもいる。確実な変化がある中で、新しいビジネスも生まれ、日本食材を扱う店が開業し、新規店のオープンも続く。
香港では現在、香港居民が中国本土に旅行し、中国本土で消費を行う「北上消費」の波が続いている。広東省・マカオグレーターベイエリア(粤港澳大湾区)の経済の一体化や依然と続く香港の物価の高さなどさまざまな理由が考えられ、この先数年は香港の景気は低迷が続くという見方が強い。特に香港の地元中小企業の経営に課題をもたらしている。
下半期も、香港で生活する人、香港とのビジネスをする人にも役立つ日々のニュースをいち早く伝えていきたい。