香港で日本人も多く住む太古城の住宅街にある飲食店「丸丸(Maru Maru)」が8月26日、業態を変更し、洋食のエッセンスを入れたカジュアル居酒屋「Bistro Maru Maru」(G1019, G/F, Kam Sing Mansion, Sing Fai Terrace, Taikoo Shing, 3 Tai Yue Avenue, Tai Koo TEL: 2505 2266)に生まれ変わった。香港の飲食集団「エピキュリアングループ」が経営する。
同店の新コンセプト作りには2人の日本人が寄与。沖縄生まれの大嶺宗善シェフは、帝国ホテルの料理長を務めた村上信夫の弟子に師事していたこともあるといい、1982年に料理人としての道を歩み始めた。フランス料理でキャリアを積んだ後、カナダのホテル「Westbrook Whistler」でエグゼクティブ・シェフを務めるなど海外での経験も持つ。
肉料理を得意とする大嶺シェフは、同店のコンセプト作りを担当した堀田智之さんと10年来の親交があり、この2人がタッグを組んで新コンセプトで再スタートを切った。2人の日本人が香港に身を置き、店にも立ち、店舗運営の基礎作りを担っている。
店内は、木の素材をふんだんに使用。自家製ドリンクやフルーツビネガーを並べ、温かみのある雰囲気を作った。ピーチ、キウイやグレープフルーツなどの中から好きなフルーツを選べるチューハイを用意したほか、健康志向の人には、ハニージンジャーレモンビネガーやキウイパイナップルビネガーなど自家製フルーツビネガーなどもそろえる。
同店では典型的な日本人が考える「洋食」というよりは、海外から日本に伝わり、日本に根付いた料理として「洋食」を捉え、「香港人から考える洋食」をベースに創作料理も含めてさまざまなメニューを用意した。今後、より日本人が考える「洋食」に近いメニューも検討していくが、スタート段階では食材やソースに洋食エッセンスを盛り込む。
素材面では、豚肉を決めるために日本全国18種類の豚肉を比較し、北海道産三元豚を採用した。豚肉の状態を見ながら数日熟成させたり、温度管理を行ったりして、「柔らかく味わい深い肉になるように仕込む」という。
看板メニューの豚ロース「二段低温油吉列豬排」(128香港ドル、定食=148香港ドル)は、日本から取り寄せた小麦粉と卵でパン粉をつけ、豚肉を2度こんがりと揚げる。揚げる温度は低めに設定し、きつね色の皮の中に肉汁を残しながら、しっかりと火を通して提供する。
香港ではごまダレを併せることも多い豚カツに添えるキャベツだが、同店では酸味と塩みのバランスを調節したレモンソースをかける。「豚カツソースだけも8~9回は試作を重ね、酸味、深みも感じられるようにと工夫した」という。今後は、わさび塩の提供なども検討している。
チキンミラネーゼ「米蘭薄炸鶏排」(75香港ドル)は、鶏の胸肉を薄くたたき、細かいパン粉をつけてからフライパンでカリカリの黄金色になるまで揚げたもの。シェリー風味のドレッシングであえたグリーンサラダを添える。
どのメニューも日本人シェフと香港のスタッフをつなぐため、「全て日本語から繁体字に翻訳して細かく落とし込んだレシピがある」と言い、日本人ならではの繊細な部分を伝える努力をしている。
デザートの注目は「西京味噌(みそ)風味のクレマカタラーナ」(48香港ドル)。香港人に人気のカタラーナに、大嶺シェフがキャラメルに西京味噌を加えることで日本風にアレンジした。
ランチセットにも定食などそろえ、串や刺し身などを頼む居酒屋スタイル、1人で豚カツ定食を食べに行くスタイルのいずれでも利用できるようにしている。
営業時間は11時30分~22時。