香港と深センにある税関の一つ「皇崗口岸(Huanggang Port)」が建設中の新しい税関の全貌が12月14日、明らかになった。
2025年中に完成する。中国本土と香港の出入境関連手続きを、それぞれ2つの場所で行うのではなく、香港側か中国本土側のどちらかで場所で一括して行う「一地両検」から、さらに1回で手続きを済ませる「一次放行」を実施することから、2つの都市の往来がより活発化するものと見られている。
皇崗は、香港市民の利用が最も多い羅湖(Lo Wu)の税関の西側に位置する税関の一つで、1991年8月に運用を始めた。2003年からは、唯一24時間、運営している税関でもあり、両市民にとって重要な場所になっている。
今回、新しい税関を作る理由について、香港と中国両政府は、香港北部にある「北部都会区(Northern Metropolis)」の開発で同所が北部都会区の中心地区となり、人の往来が活発化していくことを挙げる。現在の処理能力では間に合わない公算が大きいことを見越しての措置。政府は近隣の50万平方メートルの土地を開放し、香港と深センの科学技術のイノベーションを起こすことを目指したエリアにすることも視野に入れている。
新しい税関は2019年6月に着工した。面積が8.75万平方メートル、総建築面積68.97万平方メートルのほぼ直方体の形をしている。税関手続きが簡素化される「一地両検」を行うことで、これまでは20分ほど諸手続きに要していた通関が、今後は最速で5分で済ませることができるという。
時間短縮の鍵となるのが、2004年に運用が始まり20年経過した「e-道(e-channel)」で、顔認証などで出入境手続きを簡単に済ませられることができるもの。最初、導入されたのは香港国際空港のみだったが、現在は各フェリーターミナルや一部鉄道駅にも設置されており、計756台が導入されている。累計利用実績は24億回以上になっているが、大きな問題を起こしていない。技術の進歩に伴い、出入境管理局は2021年には「非觸式e-道(ノンタッチeチャネル)」サービスも始め、「香港市民が通関手続きを完了するのに要する時間はわずか7秒とし、従来のe-道より13%早くなった」という。
アクセスは、既にMTR落馬洲駅(Lok Ma Chau)と深センの地下鉄7号線が接続されているが、北部都会区に関係したMTR北環線(Northan Link)とも将来は接続する。最終的には5路線が新しい税関につながる予定。
運用開始後、1日20万人が利用すると見られているが、北環線が接続された後は1日30万人にまで増加すると試算する。車両での通関は1日1万5000人と予想している。
北部都会区の成否は、人の往来が容易かどうか、活発化どうかという要因が非常に重要なものとなる。将来、別の税関の建て直しや新規の税関が建設される場合を含め、新皇崗の事例がどの程度成功するかが注目されている。