
香港のアカデミー賞に当たる「第43回香港電影金像奨(Hong Kong Film Award)」が4月29日に行われ、作品賞は日本でも興行収入が好調なアクション映画「九龍城寨之圍城(Twilight of the Warriors:Walled in/トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦)」が受賞した。併せて、同作のアクション監督を務めた谷垣健治さんが最優秀アクション設計賞を受賞した。
「九龍城寨之圍城(トワイライト・ウォリアーズ)」出演俳優陣、日本での舞台挨拶時の様子
2024年に作品賞を受賞した「毒舌大状(A Guilty Conscience/毒舌弁護人~正義への戦い~)」は興行収入が1億香港ドルを超え、当時の香港映画歴代興行収入1位を記録したが、トワイライト・ウォリアーズも1億香港ドルを超えたほか、同じく作品賞にノミネートされた「破・地獄(The Last Dance/ラスト・ダンス)」は毒舌弁護人の興行収入を塗り替え香港映画史上1位に。見た目は好調に見える香港映画だが、売れる映画と売れない映画の二極化が進んだほか、その裏で、映画館の閉鎖が続いており香港映画を取り巻く環境は決して楽観できない。
最優秀作品賞にノミネートされたのは、「トワイライト・ウォリアーズ」「ラスト・ダンス」のほか、「●●(PAPA/お父さん)」「看我今天怎麼説(THE WAY WE TALK/私たちの話し方)」「從今以後(ALL SHALL BE WELL)」の5作品。
受賞したトワイライト・ウォリアーズは、大型セットのほかCG目視しリアル感を演出した。実物の九龍城を見たことのない香港人が増えたというノスタルジーの要素が含まれたことにより興行収入が大きかったほか、香港国際空港やショッピングモールAIRSIDEでセットを展示するなど、香港観光への貢献も大きかった。結果、18部門でノミネートされ9部門で受賞した。
日本でもカンフー×九龍城へのノスタルジーから興行収益が好調で、日本語吹き替え版が新たに製作されるなど、盛り上がりが継続している。谷垣さんは同作のアクション監督として携わった。成龍(ジャッキー・チェン)さんの映画をきっかけで、倉田保昭さんが運営する倉田アクションクラブでスタントを学び、1993年に単身香港へわたった。スタントマンなどを含めキャリアを重ね、香港映画界では既に一定の地位を確立し、香港映画人からの信頼も厚い。
最優秀アクション設計賞の受賞は第40回の「怒火(Raging Fire)」に次いで2度目の受賞。ただし、怒火は、甄子丹(ドニ―・イェン)さん、谷垣さんなど4人で共同受賞しており、今回は初めて単独での受賞となった。
トロフィーは、師匠である倉田保昭さんから受け取った。壇上で、広東語でスピーチした谷垣さんは「本当にうれしい。私は1989年に倉田保昭さんに教えを受けたが、私の夢は香港映画界の一員になることだった。私は香港の映画人になっていますか?」と会場に問いかけた。会場から大きな拍手が起きた後、妻や関係者に感謝。最後は「大きな予算、小さな予算の映画であろうと高い質のアクション映画を作り続ける」と意気込みを見せた。
主演監督賞もトワイライト・ウォリアーズの鄭保瑞(ソイ・チェン)さんの頭上に輝いた。主演男優賞は「お父さん」の劉青雲(ラウ・チンワン)さん、主演女優賞は「ラスト・ダンス」の衛詩雅(ミシェール・ワイ)さん、助演男優賞も「ラスト・ダンス」の朱栢康(トミー・チュウ)さん、助演女優賞は「お父さん」の谷祖琳(ジョー・コク)さん、最優秀新人賞は「お父さん」の蘇文濤(ディラン・ソウ)さんが、それぞれ受賞した。
●=父かんむりに巴。