
香港の飲茶の老舗「蓮香楼(Lin Heung Tea House)」(G/F-2/F, Cheung Lee Commercial Building, 25 Kimberley Road TEL 23201318)が尖沙咀の金巴利道(Kimberley Road)に24時間営業の2号店をオープンして、6月28日で1カ月が経つ。
同店は、1889年に広州市西部に開業した「連香楼」が「蓮蓉」というハスの餡(あん)を使ったお菓子で有名になり、1918年には香港に進出したのが始まり。中環店も100年近くの歴史を誇る同店の歴史は一言では語れず、突然の閉店やオーナーを変えての復活など、度あるごとに香港社会をにぎわせてきた。
九龍半島側で、多国籍なレストランやバーがずらりと並ぶ小道「ナッツフォードテラス」の入り口に当たることから「バーで飲む前に、また〆のように飲茶(ヤムチャ)を楽しんでほしい」と言い、店内に設置されたDJブースで、広東ポップの懐メロをテーマにしたイベントなども時折開き、若い世代にも香港の夜も楽しむ「宵夜文化」を語り継いでいきたいという。店舗は2フロア構成で、総面積は9000平方フィート。180人を収容できる広々とした空間が特徴。店内は伝統的な飲茶スタイルであるワゴン形式を踏襲しながらも、20人で利用できる個室も用意するなど、さまざまなニーズに対応できるようにしている。
一日を5つの時間区分に分け、6時~11時の朝食時間を「早市」、11時~14時をランチとして「午市」、14時~17時をアフタヌーンティーで「下午茶」、ディナー「晩市」は17時~21時。夜食としての位置づけ「宵夜」は21時から翌朝6時まで連続して営業する。点心はもともと、朝から昼にかけて食べるのが一般的な文化であるため、9時~13時が点心の種類が一番充実しているという。点心は小點(25香港ドル)から頂點(48香港ドル)まで6段階に設定する。
席に着いた客は、まずお茶を選ぶ。日本人はプーアル茶「普●茶」やジャスミン茶「香片」などを頼むことが多いが、中国茶の緑茶である「龍井茶」に加え、花茶である「胎菊王」なども用意している。ワゴンも用意しているがフロア内の通路が狭いため、1階にはせいろを積み上げたコーナーを用意し、そこに点心を積み上げていく。客は、テーブルの番号が書かれた點心紙を持って食べたいものを注文する。
同店には役割別に3人の料理長がおり、100種類の点心と100種類の料理を展開。点心を担当する梁近耀さんは毎朝3時に出社し30年以上点心を作り続けている。シューマイにもいくつかの種類があり、同店でも長年提供しているシューマイに豚の肝を載せた「鮮豬潤燒賣」(35香港ドル)は、「豚肉と油、塩、酒の組み合わせが大切」だと言い、ウズラの卵入りの●鶉蛋燒賣や古法豬肚燒賣などもある。
豚肉と鶏肉を混ぜて外の衣がカリカリになるまで揚げた「炸芋角」も、200度以上の油で5分揚げることで衣がサクサクになり、同店ならではの特別な形状になるという。梁さんは長年点心だけに集中しながらも、例えば今月はドラゴンフルーツを使ったエビギョーザ「火龍果蝦餃」を投入するなど新商品の開発にも余念がない。メニューには書いてないが、同店の由来ともなっているハスの実ペーストのまんじゅう「蓮蓉蛋黄包」が並ぶこともある。「点心の難しさは100度近くにもなる蒸す温度や時間を経験で判断していくこと。全部時間も違う。もちろんひだを均等に作るのも簡単じゃない」と梁さん。
ディナー向けのメニューとして用意した骨抜き鴨の蒸し料理「蓮香正宗覇王鴨」(638香港ドル)は、李少忠シェフが手がけるが、3日前に予約が必要。「カモの骨抜きが一番時間がかかる作業」だと言い、ハトムギ、ユリ、豚のバラ肉、シイタケ、レンコン、塩漬け卵などをカモの中に入れ、1時間蒸した後に2時間ずっと中華鍋で皮ごと油をかけ続ける作業を続け、その後、さらに2時間蒸すという工程を経て完成する。
24時間営業。
●=さんずいに耳、●=庵へんに鳥