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香港の行政長官、施政方針発表-選挙制度は「全人代の決定に基づく」と再強調

香港市民の関心が高い「住宅問題」

香港市民の関心が高い「住宅問題」

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 梁振英・行政長官は1月14日、今年の施政方針演説を立法会で行った。この中で梁長官は誰もが自由に立候補できないため大規模なデモに発展した選挙制度改革について「全国人民代表大会の決定に符合する形でなければならない」とあらためて強調した。香港市民の関心が高い住宅問題についても、過去の施政方針演説同様に力をいれることをあらためて表明。このほかにもビザ関係、低所得者層の支援などさまざまな政策を掲げた。各分野の施政方針は下記の通り。

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 【政治改革】 1国2制度と自治について「高度な自治とは絶対自治ではない。随意的な自治でもない」という見解を示した。1国2制度は歴史上前例のない特殊な体制で、国際的先例も国際的標準もないと述べ、遠回しに先例やルールは中央が作ることになると解釈できるような発言をした。79日間の大規模なデモに発展した「真の普通選挙を求める」選挙制度改革に関して「政治改革ついての実質的決定権は北京にある」とした。続けて「『香港問題、香港解決』這個口号有違憲制」(The slogan of “Hong Kong shall resolve Hong Kong’s problems” does not conform with our constitutional arrangements)とやや強めの口調で演説。つまり、“香港の問題を香港が解決するというスローガンは違法”という意味で、香港の政府トップが1国2制度を否定するような発言をしたことは今後波紋を呼ぶ可能性がある。

 【住宅問題】 香港の永遠の課題ともいえる住宅問題。この問題は生活に直結するということで政治改革よりも香港市民の関心が高い。年間平均2万戸の公営住宅の建設に着手するとしたが、本格的な完成は先のため15-16年に2700戸、16-17年に2000戸の販売、同じく16-17年度に1600戸の仮販売を行うとするにとどまった。格安の公営住宅の建設する計画や土地不足解消のためランタオ島のさらなる開発の研究するとも発表した。

 【観光など】 香港ディズニーランドの第2期の開発の検討に入る。フェリーターミナルとして供用されている旧啓徳空港エリアをホテルゾーンとするほか、同地区にスポーツコンプレックスの建設を今年上半期から始め、2017年にオープンする。以前から計画されていた香港スタジアムを超える大規模スタジアムの建設が組み込まれてもおかしくはない。

 【低所得者、高齢化問題】 定年後の生活保障ということで500億ドルを割り当てるよう財政長官と話すとした。低所得者への生活給付金なども継続する。

 【労働問題】 少子化が進む香港は日本を追うかのように労働人口が2018年前後から減少すると見られている。そのため、公務員の定年の延長させるほか、1980年代に外国に移民した香港人の子どもたちは香港の労働ビザを持っていないが、18歳から40歳の第2世代を対象に1年間の労働ビザを優先的に発給する。その一方、1000万ドル以上を投資すれば香港のビザがもらえるという投資移民のシステムは今日1月15日から一時停止となった。また、最低法定賃金を時給32.5香港ドルに引き上げるとした。

 【青少年の教育、発展】 香港では少なくない半日の幼稚園だが全日制の幼稚園の増加させるほか、3億ドルの基金を設立して青年の起業をサポートする。議論を呼びそうなのが中国史と世界史の教える内容を新しくするという点だ。内容次第によっては2012年の教育カリキュラムをめぐって香港政府を撤回に追い込んだデモが起こる可能性がある。

 あらゆる面をカバーしようとする方針は香港社会にさまざまな問題が山積みされていることの証しともいえ、香港政府の特徴でもあった「小さな政府」「レッセフェール」というイメージが、ほぼ無くなったという見方ができそうだ。

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