香港、マカオ、広東省珠海を結ぶ「港珠澳大橋(Hong Kong-Zhuhai-Macao Bridge)」の主体部分(総工費は主体だけで381億人民元)が6月29日24時45分、つながった。
全行程の80%が終了し、後は、残りの橋を2016年8月中に完成させるほか、付帯工事を進めていく。本来は2016年に開通予定だったが、工事開始の延期があったため開通が遅れている。具体的な開通の日程はまだ公表していないが、少なくとも2017年にはテスト走行を開始したい考え。
同橋はもともと、香港大手のデベロッパーである合和実業(Hopewell Holdings)の創業者である胡應湘さんが1983年、珠海市政府に「伶?洋大橋」というのを提出したのがはじまり。現在、香港から珠海まで陸路を使う場合、深?-東莞-中山-珠海-マカオとなる。
珠江デルタをぐるりと回る道のため、走行距離にして200キロ、約4時間もかかってしまうが、香港と珠海の間に橋の建設が実現すると所要時間は1時間程度になるといわれており、経済効果が期待されている上がるとした。また、合和実業は中国本土で多くの高速道路を含めた道路、土木系の建設を多く手掛けており、胡應湘が橋の構想を持ったことは、自然な流れだった。
膨大な費用、建築技術の関係、政治的な面から、この計画はしばらく埋もれていたが、香港が中国に返還され、2000年を過ぎたころから再び脚光を浴びるようになった。このころには香港とマカオ、珠海を結ぶY字型で建設をするという方向で話がまとまった。一時期、深センにも伸ばしてほしいという要望がありYを2つ重ねたようなダブルY型だったが、香港の財界がそれでは深センがより経済発展をすると恐れたため反対。中国政府もその意向を受けて従来のY字型で建設計画を承認した。
2009年12月15日に珠海側から着工。当時、副総理だった李克強が立ち会った。全長は55キロの橋。うち22.9キロは海の上にかかる橋で、もちろん海上橋では世界最長だ。6.7キロは大型船の通航させるため海底トンネルとした。
橋自体の走行時間は30~40分と現在のフェリーの約半分となる。自動車専用道路で鉄道向けの線路や設備は建設されない。腐食を防ぐコーティングすることによって耐用年数は120年まで伸ばした。仮に2017年にテスト走行を開始したとしても、部品の信頼性、台風を受けた時の耐久性チェック、交通システムなどの関係から、開通は2018年、2019年までずれ込んでも不思議ではない。
これだけの大型プロジェクトのため、香港や中国のみならず日本、デンマーク、アメリカ、イギリス、ドイツ、トルコなど多くの建築関係者が建設に携わっている。幸い、香港はすでにつり橋としては世界有数の長さを誇る青馬大橋(Tsing Ma Bridge)の経験があるため、信頼性と言う意味では大きな問題は発生しないと予想される。
実際に、香港からマカオに向かう場合の流れは次のようになる。まず東涌(Tung Chung)の手前で香港国際空港の東側に作られた人工島に向かう橋を渡る。人工島には出入境管理所=税関がありパスポートのチェックを受ける。そして香港接線(Hong Kong Link Road)という道路を走り、海底トンネル、海上橋、マカオの東側に作られた人工島でパスポートチェックを受け、マカオ市街に出る。
橋ができれば、マカオだけではなく、中国南西部ももっと身近になることから、経済や観光といった面での交流促進が大きく進むことになる。