陳茂波(Paul Chan)財政長官は2018年2月28日、2018-19年度の財政予算案を発表した。歳入は前年度の5,077億香港ドルから6,045億香港ドルに増加した。財政備蓄は1兆920億香港ドルと1兆香港ドルの大台を超え、ほぼ2年、歳入がなくても香港財政を賄えるほどの余裕がある優等生都市と言える。
歳出を分野別に見ると、教育の1,137億香港ドルが最も多く、これまでのインフラ整備を抜いてトップになった。続いて社会福祉に922億香港ドルを投じ高齢者社会に向かう香港を象徴するような予算配分。その他が871億香港ドル、インフラ整備が856億香港ドル、衛生対策に780億香港ドル、保安に533億香港ドルなど。
2017-18年度の財政収支は当初の黒字額は1,217億香港ドルと想定していたが、実際には1,380億ドルの黒字と予想を大幅に上回り、その40%を住民に還元することを決めた。歳出増加と大幅還元という積極財政で、大きな政府を目指すというここ数年の香港政府の路線がより強調されることになった。
個人を対象に見ると、所得税は累進課税の税率が変更され、最初の5万香港ドルは2%、以下、次の5万香港ドルごとに6%、10%、14%、17%と5段階での課税となった。前年度は上限を2万ドルとした減免額を、18-19年度は上限を3万ドルとして予定納税額の75%を減免する。第4四半期に上限2,500香港ドルを上限として香港政府に支払う土地のレートが免除されるほか、子女の扶養控除が1人あたり12万香港ドル、55~59歳の父母または祖父母を扶養しているケースは2万5,000香港ドル、60歳以上であれば同5万香港ドル、身障者は同7万5,000香港ドルとする。高齢者、生活保護などの各種手当受給者はさらに2カ月分を追加支給する。
法人では、事業所得税が上限を3万ドルとして予定納税額の75%を減免。適格研究開発費は200万ドルまでの控除額を300%までとし、余剰分に対しての控除額は200%までとなった。科学技術創出のための新しい施設で落馬洲に建設予定の「港深創新及科技園(HKSTP)」第1期の建設に200億香港ドル、イノベーションのための研究開発を支援する基金に100億香港ドルの予算をつけた。
観光業全体には3億9,600万香港ドルの予算を割き、うち香港政府観光局(HKTB)2億2,600万香港ドルに実質的な補助金として交付して香港の観光業の促進を担ってもらう。海洋公園(Ocean Park)の発展のため3億1,000万香港ドルを投じるほか、今後1年間で香港の小中学生を対象に1万枚の無料入場券を配布する。
香港国際空港は開港して20周年を迎え空港ビルや滑走路の整備に注目が浴びていたが、国際郵便を取り扱う「空郵中心(Air Mail Centre)」の施設改修に50億香港ドルの予算をつけ物流のハブとしての地位向上を図る。香港にある企業の98%、数にして33万社は中小企業だが、それらを対象にした基金に対して15億香港ドルを交付する。建設業界にも10億香港ドルの基金を設立して、業界の支援を行う。ユニークなところでは香港市民の台所である「街市」の整備20億香港ドルを使う。具体的には今後10年間で街市の建て替えのほか、エアコンの設置などを行う。教育関係では、専門学校に25億香港ドルの補助金を出し、貧困の学生には1人2,000香港ドルを支給する。
土地資源では、今後5年間に10万戸の住宅を供給し、うち7万5000戸が公営住宅、2万5000戸は補助金を受けた住宅だ。民間住宅も将来3~4年で9万7000戸が供給される見込み。ビジネス向けの土地は、中環(Central)、金鐘(Admiralty)、旧啓徳空港(Kai Tak Airport)跡地などで110万平方メートルのスペースを供給する。ホテルなどの用途に使われる公有地売却(53万平方メートル分)を実施する計画を立てている。
香港政府は2017年の国内総生産(GDP)は3.8%という高い成長率を達成したとし、2018年も2017年並みの3~4%の成長率になると予想する。