日本の若手陶芸家の作品を季節ごとに2人ずつ紹介してきた「日日和器」展の集大成ともいえるグループ展が現在、香港フリンジクラブのAnita Chan Lai Ling Gallery (2 Lower Albert Road, Central)で開催されている。
日本を訪れた際に、日本の器に心を打たれたジェシカ・ウォンさんからのアプローチもあり実現にこぎつけた同展は、見るものとしてだけでなく、実際に料理を載せて楽しむという器の身近さに「日本らしさ」を感じ4回の季節展と最後のグループ展を実現した。
若手陶芸家を取りまとめてディレクションを担当した陶芸家の二階堂明弘さんは「ある意味、東北の震災をきっかけにSNSでのコミュニケーションが増え、それがこの陶芸界でも大きな変化をもたらした」と分析する。陶芸家の中には人間国宝とも呼ばれる人もいるが、そうでなくても一人一人、その地域ごとに個性があり、それを多くの人が直接知るきっかけになったからだ。自分の近くしか見えない傾向がある陶芸家たちにも、たくさんの情報が入るようにもなった。二階堂さんは、震災後には器を届ける活動も年に1回続けているという。
二階堂さんは「陶器とは感受性がある人たち同士が、各地の文化を越えて引っかかるような感じがある」と海外での展示会にも積極的に取り組んできた。
今回出展した作家の一人、岩下宗晶さんは益子出身の陶芸家。150年続く窯元に生まれ、6代目ながら作風を踏襲しているわけではなく、「飛びカンナ」と呼ばれる益子の伝統的な技法を使い、益子の土で形を作ったものをろくろに載せ、回転しながら鉋(かんな)当て作る模様をモチーフに作品作りにいそしむ。益子は個人作家が独立しやすい土壌があり、30~40代の人も多いという。
瀬戸を拠点に活動する伊藤千穂さんは、織部の色の美しさに魅せられたことが陶芸家への転身のきっかけになったという。伝統と新しいものをミックスさせるのがスタイルで、落ち着いた色味にモダンな模様が特徴。細かい凹凸を彫ったくぼみに金と銀で細工を施す「錆化粧銀彩」は、柄の大きさのバランスなども重要なため、海外向けに作品の大きさなどを変えずに展開する。
開催時間は11時~20時30分(最終日は16時まで)。入場無料。3月17日まで。