香港政府食物環境衛生署(CFS)は7月20日、2011年に発生した東日本大震災による福島第1原子力発電所の事故を受けて茨城、栃木、群馬、千葉県産の野菜、果物などの輸入を禁止していた措置を7月24日正午から緩和すると発表した。福島県産は規制を継続する。
東日本大震災後、2011年3月24日より5県産の野菜、果物、牛乳、乳飲料、粉乳は輸入停止となっていたが、今回の措置で農林水産省による「放射性物質検査証明書」と「輸出事業者証明書」を添付すれば、茨城、栃木、群馬、千葉県の4県産の香港向け輸出が可能になる。それぞれの産地の明示も必要だ。
冷蔵・冷凍の野生鳥獣肉、食肉、家禽(かきん)肉、家禽卵、活魚、冷蔵・冷凍の水産物については、福島を含めた計5県共にこれまでと同じで変更はなく「放射性物質検査証明書」を添付すれば輸出できることになっている。
CFSのスポークスマンは輸入禁止を発令した3月24日以降、香港政府側で49万個のサンプルテストを実施し、日本側でも200万個のテストを実施してきたとし、「国際的な専門機関によっても日本の放射線による食品の安全性があることも確認されている」と禁輸を緩和した理由を明らかにした。
輸入の規制緩和については、日本の官民が長い間香港政府に長らく働きかけてきた。香港を訪れた河野太郎外務大臣が3月25日に林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官と会談した際も、輸入禁止緩和を要請。林鄭行政長官は「香港特別行政区政府には市民の健康を守る責任があり、食の安全と市民の信頼を維持するための有効な措置が必要」と述べ、「CFSは、引き続き日本当局と連絡を保ちながら、最新の状況を考慮して適切な措置を講じていく」と語っていた。
日本の食品業界にとって香港は最大輸出先で、同時に2017年は220万人を超える香港人が訪日しており、日本食への理解が非常に高いため、今回の規制緩和は追い風になる。一方、検査には費用と時間がかかるため、香港に輸出しようとする人たちがどれだけいるのかどうかに加え、香港のスーパーマーケットなどが4県の商品を輸入するかどうかについてはは企業戦略によるところがある。香港市民が買うかどうかは現状では誰も分からないことに加え、ほかの都道府県の同じ野菜や果物も容易に購入できるため、香港市民は日本製品の購入に対する選択肢が広く、輸入規制緩和が4県にとってすぐ売り上げ向上につながるかは未知数だ。そのため日本政府と4県が県産品の安全性をアピールしていくことがポイントになりそうだ。