日本政府観光局(JNTO)は12月20日、訪日外国人旅行者数が1000万人の新記録を樹立したことを発表したが、これを受けて香港市場は70万人を超えることが確実となった。これは香港単体で過去最高の数字。
人口約700万人余りであり、「日本を訪れる香港人の4人に1人が10回以上の訪日経験がある」という成熟市場の香港では、5年前の2008年の記録「55万人達成」が頭打ちと言われたこともあったが、今年はそれを大幅に上回った。
新記録を受けJNTO香港平田真幸所長はその理由について、「香港市場についてのより綿密なニーズの把握、商品開発・販売促進支援等、調査から消費までの一貫したマーケティングにより、まだ旅行していないエリアの魅力を情報発信できたこと」と振り返る。円安が進んだことによる割安感は一つの大きな要因だが、それ以上にリピーターにさらなる訪日を誘引したのは、「まだまだ香港人が知らなかった日本の魅力を徹底的に紹介した結果」と胸を張る。
香港では春と秋にテレビ局最大手TVBで日本の特集番組を放映するなど、看板や新聞などの平面広告、フェイスブック(ファン数11万人)、ウェブに加え、電波を使ったプロモーションを展開。九州や北陸、四国などこれまであまり訪れていなかった地域についての特集を組み、「ぜひ行ってみたい」と大きな反響があったという。
JNTO香港事務所では、「レール&ドライブ」というテーマの下、鉄道とドライブという新しい旅のスタイルをPRしてしてきた。平田さんは「安全に自由気ままに旅行できる国は意外と少ない。もともと縛られたくない意識の人が多い国民性もあり、彼らにとって自動車や鉄道を使って日本を自由に旅行し、その先の食や自然を体験できることは潜在的欲求に合致する」と分析する。香港政府統計によると、香港での運転免許を所有する人は180万人いるものの、日本以上に購入維持費がかさむ自家用車の台数は約50万台。運転免許を持っているのに運転ができない環境や日本と同じ左側通行であることにも目をつけてきた。ある大手旅行会社によると今年はレンタカーの利用者が約5割アップしたともいう。
受け入れ側の日本の体制についても問題が指摘される中、NEXCO中日本(中日本高速道路)が販売する外国人向けの「速旅Central Nippon Expressway Pass」は、指定エリアを最大14日間定額で利用することができるプリペイド式ETCカードで、現在、香港人の利用者も多いようだ。中部国際空港からだけでなく、東京圏内からも利用できるなど、旅行者の立場を考慮した広域での取り組みも芽を出し始めている。
「来年はさらに目標を高くし、チャーター便やLCCが地方空港をより積極的に利用できるようなシチュエーションが生まれると80万人も夢ではない」と平田さん。最先端を行く成熟市場である香港の実績は、アジアの今後の他の市場に向けた展開の布石となる。2014年は「違い」のある日本の魅力をさらに伝え真価を発揮する年となりそうだ。