香港の交通や住宅政策を取り扱う香港政府運輸及房屋局が9月18日、「鉄路発展策略2014(Railway Development Strategy 2014)」を発表した。2026年までに6路線で約1,100億ドル(約1兆5400億円)に上る大掛かりなプロジェクトだ。
現在建設中の香港と広州を結ぶ高速鉄道が大幅な予算超過していることに加え、最初の新線の着工から8年で6路線を運行させるため資金、人材など多方面で現実的ではないと懸念する声も上がっている。
将来の人口増加を見込んでの措置だが、北港島線と東九龍線を注目路線とする。具体的な路線計画は着工順で下記の通り。
2018年は北環線(Northern Link)に着手。試算では230億ドルかかり、2023年に開通させる。現在の落馬洲支線に古洞(Kwu Tung)駅を設置し、そこから南西に向かい西鉄線(West Rail Line)の錦上路(Kam Sheung Road)駅と接続する。
屯門南延線(Tuen Mun South Extension)は現在の屯門駅からさらに数キロ南まで延伸。2019年に着工し22年供用開始。総工費は55億ドルと試算。
約7.8キロの東九龍線(East Kowloon Line)は2019年に工事が始まり運行開始は2025年を予定。鑽石山(Diamond Hill)駅と寶琳(Po Lam)駅間を結ぶ。途中には秀茂坪(Sau Mau Ping)など5つの駅を新設。途中、山の中を抜けるトンネル工事も必要なことから275億ドルが必要としている。
東涌西延線(Tung Cheung West Extension)は東涌に住む住人8万2000人の半数近くが西地区に住むことから南西部方面に延伸することも計画。60億ドルかけて2020年に起工式を行い2024年に完成させたいとしている。同地区北東部に人口11万人が居住する埋め立て地の開発の研究も行われており、それが実現すれば東涌東(Tung Chung East)駅の建設も考慮する。
南港島線(西段)(South Island Line(West))は、以前から話が進んでおり、今回の計画でもあらためて明記された。香港大学(HKU)駅を起点に数碼港(Cyber Port)、香港仔(Aberdeen)など5駅を経由して東段(East)の黄竹坑(Wong Chuk Hang)駅につながる。2021年に工事が始まり2026年の運行開始を目指す。総工費は250億ドルと見積もる。
最後は2021年に着工する北港島線(North Island Line)。200億ドルを5年かけて工事を行うが、将軍澳線(Tseung Kwan O Line)の起点・終着駅の北角(North Point)駅からさらに西に延び、銅鑼湾北(Causeway Bay North)、会展(Exhibition)、添馬(Tamar)を通って香港(Hong Kong)駅に到達する。
ほかにも西鉄線の天水圍(Tin Shui Wai)と兆康(Siu Hong)の間に洪水橋(Hung Shui Kiu)という駅を30億ドルかけて新設することも併せて発表。工期は2021年から24年に設定した。
同局スポークスマンは、香港と広州を結ぶ高速鉄道が予算超過し、運行開始時期もずれ込んでいることについて、「あれでたくさんの経験と教訓を得た」とし、香港鉄路(MTR)が香港唯一の鉄道運営者であることから、彼らの意向も先に聞かなければならないとした。香港建造業分包商聯會(HONG KONG CONSTRUCTION SUB-CONTRACTORS ASSOCIATION)の伍新華(Lawrence Ng)会長は「巨大な挑戦だ。人材が集まるかどうか大きなプレッシャーがかかる」とし、工事に必要なスキルを持つ作業員を見つけられるのかどうかについても懸念を示した。香港に支店を持つ日系の建設会社はMTR関連の工事で大きな実績を誇っており、当然受注を狙うものと予想される。