西貢(サイクン)にお茶と中華料理をメーンに提供する「老香江茶居」(51 Yi Chun Street, Sai Kung)がオープンして、約1カ月がたった。
海鮮料理で知られる同エリア。住居も比較的低い建物が並ぶなど、香港の中心部と街の雰囲気は異なるが、同店は海鮮料理のイメージを変えるおしゃれな店がオープンしたと香港人の間で話題だ。
店内に足を踏み入れるとお茶と花の香りが漂う。シャンデリアの横に古い扇風機がつられ、大きな羽がゆっくりと回り、白と黒を基調にした店内でとりわけ目立つのが、高い天井に整然と並べられた昔ながらの茶缶。プーアル、鉄観音などの定番のお茶をはじめ、バラ、ジャスミン、ギンモクセイをミックスした自家製の花茶、ハイビスカスやクコの実を加えたスペシャルティーも並ぶ。「コーヒーのような、カクテルのような感覚でお茶を楽しんでいただきたい」と、羅漢果の実とプーアル茶をプレンドした「普珥羅漢果」(80香港ドル)を手に持ちながら話すのはオーナーのポールさん。
40種類以上のお茶と一緒に提供するのは、20年以上の経験を持つベテランシェフ「自慢」の料理。ランチは4つのセット(各100香港ドル)のみで、「三浸攻瑰鼓油鶏伴麺」は、しょうゆで3回漬けて煮込んだ鶏肉を冷水で冷やすという、中国調理法をベースにマレーシアの海南チキンの作り方を取り入れた料理で、むね肉までジューシーで柔らかい味わいが特徴。
ディナーは8品のコース(550香港ドル)と11品のコース(650香港ドル)から選ぶ「プライベートキッチンのような設定」。「メニューの選択肢が多い割りに味の奥行きがない、それが今の中華料理によくある問題なのでは」とポールさんは続ける。料理は全てオーダーが入ってから作るため、客は 15分ほど待つが、食材の本来の味を楽しめるという。1960~70年代にはポピュラーな料理だったオープン焼きの魚の腸「●魚腸」は、水の代わりに魚の味によく合うミルクを使い、魚の味を一層引き出すために塩を使わずに塩漬け卵を使用。前菜の「酥炸去骨獅子魚」は、小魚の獅子魚を骨抜き、姿揚げにするなど、手間暇ひまを惜しまない。コースには西貢ならではの海鮮料理も入っている。
営業時間は12時~23時。月曜定休。
●=火へんに局