香港金融管理局(HKMA)と発券銀行である香港上海?豊銀行(HSBC)、渣打銀行(Standard Chartered Bank)、中国銀行(香港)(Bank of China(Hong Kong))は7月24日、共同で2018年末から流通の開始が計画されている新香港ドル紙幣のデザインを発表した。
一般的に紙幣は国が発行するものでその国の信用の上に成り立っている。しかし、香港の紙幣はイギリスの植民地だったという歴史から、10ドル紙幣は香港政府が発行しているものの、それ以外の紙幣は香港政府自体は発行せず、3つの銀行が政府からの許可を得て発行するという形式を取る。香港で最初に紙幣を発行したのはイギリス領インド帝国の植民地銀行であった東藩?理銀行(The Oriental Bank)で、1845年に香港に進出し、翌1846年、発券業務を開始したといわれている。当時の主な業務はアヘンに関連する荷為替手形だ。その後、アヘン以外でも、絹、茶、陶磁器などの貿易が拡大しイギリス本国への送金の必要性といった銀行業務の需要が拡大。上海や香港に銀行をと設立されたのがHSBCで1865年のこと。その後、イギリス政府はHSBCに発券銀行としての権利も付与する。1800年代後半に東藩?理銀行が破たんしたこともありHSBCが1993年のHKMAが設立されるまで、事実上、中央銀行の役割を果たしてきたという経緯がある。もちろん、発券銀行が勝手に紙幣を印刷しないように「カレンシーボード制」を敷くなど万全の体制を取ってきた。
2000年代に入ってからは2003年、2010年の新札発行に続く3回目の新デザインの流通となるが、その理由の一つは紙幣の偽造だ。デジタル化が進んだこともあり偽造技術も向上。特に1,000香港ドル紙幣は偽造紙幣が数回流通して一部の店では使用を拒否するケースが発生するなどの混乱が生じていた。
香港での紙幣は1,000、500、100、50、20各香港ドルの5種類あり3銀行がそれぞれのデザインで発行するため15種類の札が流通する。これまでは各銀行が自由にデザインを決めていたが、今回の新札では額面ごとにテーマと色が決められた。1,000香港ドルは「金融サービス」、500香港ドルは「香港地質公園」、100香港ドルは「広東オペラ」、50香港ドルは「蝶(ちょう)」、20香港ドルは「点心と飲茶文化」で、各行ごとに異なった解釈でデザインされている。これらのデザインは背面に施されるが、縦にデザインされるのも今回の新しい特徴。色はこれまでと同じで1,000香港ドルは黄色、500香港ドルは茶色、100香港ドルは赤、50香港ドルは緑、20香港ドルは青となる。
中国銀行(香港)の1,000香港ドル紙幣は注目を集めている。テーマは「智慧都会」で、人の頭を描き、脳の部分を0とで1表現。脳は精密や香港人のスマートさが新しいフィンテックを作り出すことなどを表現しているが、見た目によっては香港人の頭の中はお金でいっぱいという風に見えるなど、ユニークでインパクトのあるデザインに仕上がっている。
偽造防止のため、ホログラムが動いたり、光にかざした時だけ額面の数字が浮かび上がったり、エンボス加工=紙幣にわずかに凹凸を設けたり、隠し銀行コードを使ったりするなど6種類の技術が施されている。併せて、目が不自由な人のためにスマートフォンで銀行コードを読み取れる技術を開発していくことも明らかにしている。
発行予定は、1,000香港ドル=18年第4四半期、500香港ドル=2019年の旧正月前、20~100香港ドル=19年中を予定。